個人の限界
「ルールが公開された瞬間に武器をそのルールや対戦相手に合わせてチューンアップするわけか……とんでもない事を考えたな」
そりゃあ、そんな事が出来るならやった方が良いが……本当にそれだけの準備を現実的に揃える事が出来るとは恐れ入るな。
「ああ。規模にもよるが、上位層は多かれ少なかれそのレベルの後方支援を受けているぞ」
「手厚い支援を受けられるから上位をキープ出来るのか、上位に常駐しているから支援を受けられるのかはわからないが……それを崩して上位に割り込むというのは至難の業だな」
卵が先か鶏が先かの因果関係はともかくとして、上位にいる連中を蹴落として自分が上位に割り込むのはかなり難しそうだな。
「上位層の選手と友好な関係を結べれば、かなりの宣伝になるからな。どこもかしこも休む間もなく張り詰めているよ。後は……私のように財力にものを言わせてバックアップを揃えてしまうところもある。まあ、この方法を取れる選手は国内でも片手で数える程しかいないがな」
「そりゃ、組織的なバックアップと同レベルのものを個人で用意してるって事になるからな……そんなのを揃えられる奴が何十人もいて堪るかって話だ」
しかし、国内で片手で数える程って事は、世界的に考えれば数十人いてもおかしくは無いって事か? ……いや、それだけの財力を持った家は何十とあってもおかしくはないが、問題なのはそれだけの財力を持った家からそう都合良く火霊祭で上位を狙えるような才能ある魔術師が生まれてきているのかって話だ。
「まあ、百位以内に入れるような選手の中にはあまりいないが、もっと下の順位くらいなら意外と多くいるぞ」
「金持ちか名家の跡取りとかの実績作りか?」
「そんなところだ。とは言っても、財力だけでどうにかするのにも限界というものはあるがな」
「まあ、百位以内にはあまりいないって話だしな」
「そこまで行くと個人の裁量で必要な人材を集めきれなくなってくるからな。……それ以前に、組織レベルのバックアップと同レベルのものを個人で賄うには文字通りの桁違いの資金が必要になる。それを安定して支払うくらいなら、そもそも専用の組織を立ち上げて商売を始めた方がよほど合理的だ」
まあ、どんな人材が必要なのか的確に理解出来ているならもはやそれを専門としたアドバイザーなりトレーナーなりになって生計を立てるべきって話になってくるからな……個人じゃギルドのような専門職の集まりみたいな組織には太刀打ち出来ないか。




