可能なバックアップ
「協力者が必要ってのはその通りだが……それくらいは何とかなりそうなものだと思うがな。とは言っても、競技のルールを説明されてからその競技で有利に働きそうなアイテムを考察して……それを確保してアイテムボックスに収納する。これをわずかな時間でやる必要があると考えると……並大抵の事ではないか」
冷静に考えてみると、そんなサポートが出来る協力者なんて有能どころの騒ぎじゃないな。そもそも転送魔法でアイテムを取り出せる魔術師なら、競技が始まる前から準備はしっかりと整えているハズだ。要するに最低限必要な物はすでに揃っている状態である事が殆どだ。つまり協力者に求められるのは、より効果的な役割を持つと考えられるアイテムを用意する事になる。それを限られた時間でやるとなると……もはや競技者よりも優秀と言わざるを得ないな。
「ああ。一部の例外を除けば短時間で必要な物を揃えるのは不可能だ。……物によっては短時間でも用意出来るように準備をする事も可能だが……莫大な費用がかかるな」
「何だ? 莫大な費用って……? 事前に店の商品全部買い占めて倉庫にでも保管しておくのか?」
「いや、そういう事では無い。勿論、それでもなるだろうし、人によっては本当にやるのかもしれないが……私が言いたいのはそういう事では無い。私が言っているのは、魔道具の製造工場を用意する場合だ。つまり、必要な物を買うのではなく、新しく作るという解決方法だな」
「大会のために工場を用意するって事か!? 無茶苦茶だろそんなの……? そもそも数時間も無いような限られた時間で間に合うわけがないだろ?」
普通に考えたらあり得ない事だ。だが、そんなあり得ない事をオリヴィエが言い出すって事は……本当にやった奴がいるって事か?
「新しく一から作るという意味ではない。それでは数時間どころか数か月や年単位が必要になるからな。そうではなくもっとシンプルに数時間単位で加工が終わるようなアイテムだ。例えば、武器に属性魔法を付与するとかだな」
「……確か、お前の母親がそういう技術を持っているんだったか?」
「ああ。工場だってわざわざ建設する必要も無い。飛空艇の中にアトリエを作ってしまえば良いだけの話だしな」
なるほどな……飛空艇の中に必要な物を全部揃えてしまい、そこから更に状況に合わせて武器を加工して送るわけか。確かにオリヴィエの家ならそういうバックアップを取る事も可能だろうな。




