一方的な特定は不可能
「……まあ、確かにルールによって最適な行動と言うのは限られてくるな。そしてその最適な行動に対する考察が的確であればある程、他の選手のそれと重なる可能性は高くなるわけだ」
「その結果が鉢合わせするリスクだ。かと言って、リスクを恐れて最適な行動を取らなかったら他の選手にその選択肢を取られるリスクに繋がる。これが複数のチームで被れば共倒れを狙えるし、互いに消耗したところを襲撃することすら可能だが……唯一のチームだったらまんまと出し抜かれる可能性が出て来る。そしてこれは当然、自分が他を出し抜くチャンスでもあると言える」
作戦が被れば大惨事だが、被らなかったら圧倒的な優位を手に入れる事が出来る。こればかりは読み合いを制する他ないな。
「最も合理的な行動は存在するが、それを選ぶ事が最適とは限らないわけか……ジレンマという奴だな」
「だが、このジレンマは解消する方法がある。試合開始の瞬間から索敵を行う事だ。リアルタイムで情報を集める事で自分が取るべき作戦が算出される」
結局のところ、ネックなのは他のチームと行動が被る事が問題なわけだ。ならばその対策は他のチームの行動を把握する事になる。……まあ、それが出来たら苦労しないという話ではあるがな。
「だが、索敵すると簡単に言うが他の選手達の行動を把握する程の広い索敵範囲を保ち続けるのは至難だぞ? それに、索敵魔法を使った事を感知タイプの魔術師に気付かれでもしたら、逆に情報を与える事になってしまいかねない。もっとも……索敵魔法を使う方も感知タイプの魔術師になるから、その場合は魔術師同士の読み合いになるが……」
「その場合、索敵魔法を使うのと使われているのを感知するのとどっちが難しいんだ?」
「……どちらが難しいという話にはならないな。索敵魔法の力量に多少の差がある程度では、敵に自分の位置を知られずに自分だけが敵の位置を把握するのは不可能に近い」
……オリヴィエ自身が索敵魔法を扱えるタイプの魔術師だ。そんなオリヴィエが難しいと言うからには、遥かに上回っているとかでもない限りはあり得ない事だと考えた方が良さそうだな。
「基本的に敵の位置を特定した時には敵からも位置を特定されたと考えるのが普通なわけか」
「ああ。索敵魔法で良く使われる例え話だが、暗闇の中で手探りで相手を探すようなものと例えられる事がある。手を広げている時に偶然相手の体に触れる事はあるだろうが……その時は間違いなく相手だって触られたと気付かれるだろう? 方向だってわかるハズだ」
「まあ、そうだろうな」
「そんな中で相手に位置を知られずに自分だけが相手の位置を特定するには、足音を聞き取るしかない。つまり、より少ない情報量で判断する必要があるわけだ。しかし、これだって相手が互角で同じ行動を取っていたら同じ結果になる」
相手に感づかれずに位置を特定する事は出来ないってわけか。強いて言うなら、双眼鏡でも持ち込んで見つけ出すって方法くらいしか残って無さそうだな。これも相手が同じ考えだったら……勝敗を決するのは運だろうな。




