手を組む形
「値段か……それは、時と場合によると聞く」
「そりゃ、上の順位が絡んでくる程跳ね上がっていくとは思うが……」
「それは当然その傾向があるが……私が言いたのはそういう事では無い。さっきは表現の上で勝ちを譲ると言ったが、そこまで大仰ではないやり取りになるハズだ。例えば、間接的だったり遠回しに自分が有利になるような取引だ。お互いに戦いを意図的に避けるとかだな」
「金を払って見逃してもらうわけか。上位入賞が絶望的な選手が、微妙な選手にポイントを売るという話が出てたが、その逆だな。自分より強い選手に見逃してもらう事で少しでも順位を上げる事が狙えるわけだ」
順位を上げるメリットが尋常ではない今度の大会で、わざと敗退するという行為が行われているという言葉には、正直納得出来ない部分があったが……見逃してもらうという目的なら理解出来る。金を払う側は順位を上げるために交渉するだろうし、受け取る側は見逃すという立場上、順位は上だろうし、自分の順位を脅かさない相手を見逃すだろうから特に矛盾が生まれないわけだ。
「他にも細かいところで色々とあるようだな。それこそ、選手同士で徒党を組むという行為そのものが出来レースに近いものを持つからな」
「まあ、大会と全く関係無いところでのしがらみで派閥が作られてるって事もあるらしいからな。そういう事を考えたら、完全に金の力で繋がったチームが存在してもおかしくはないかもな」
金で仲間になるように説得したり、見逃して貰ったり、それ以外にも特定の選手を集中攻撃するように仕向けたりと、自分が有利になるために出来る事はたくさんあるだろうな。
「金か。まあ、賞金が出るわけではないが……金で優勝が買えるなら幾らでも出すという奴は幾らでもいるだろうな。とは言っても、どこかのタイミングで協力関係は無くなるだろうがな」
「そりゃあ優勝するのは一人だけなんだから、どこかで潰し合いになるだろうな」
これはどういう形で徒党を組んでいても、基本的にはそういう性質のチームになるハズだ。……もしかしたら、特定の一人を優勝させるためにチームを結成している連中ももしかしたらいるのかもしれないが、一般的な手の結び方とは言えないな。
「その通りだ。だが、潰し合いのタイミングを遅くするための集合的無意識というものはある。序盤で強者同士が激突するという可能性はあるが……確かにどちらかが勝ち上がれるならやってみる価値はあるのだろうが、最悪なのは共倒れになる事だ。これを考慮したらとてもではないが序盤から後先考えない事は出来ないわけだ」
だから審査官を集めようと世界中からオファーがかけられたわけだ。俺達ならば後先考えずに戦う事が出来るわけだからな。




