この街の人材
「この辺りの魔術師はレベルが高いって事か。しかし、それは因果関係が逆のような気もするがな」
「優れた魔術師が多くいるのではなく、優れた魔術師が集まって来るというわけか。結果として多くの高名な魔術師がここに住み、そして出現するのだから同じなんじゃないか?」
「まあ、それはそうだな」
結論として、この辺りにいる魔術師はレベルが高いという事になるわけだからな。
「そして、他のどんな場所よりも競争が激化していくわけだ。何せ火霊祭上位入賞が珍しくない程だからな」
「そんなに多いのか?」
「ああ。例えばこのホテルの最上階で宿泊しているような客や、マンションの高層階に住んでいるような住民はほぼ間違いなく、火霊祭で上位百名に残った事がある選手と何らかの関係があると言われている。友達だとか家族だとかな。もっとも……家族は生まれながらにしてのものだから何とも言えんが、友達の方に関しては、友達が大会で活躍したというよりは、大会で活躍した魔術師だから友達になるといった手合いが多いと聞く」
「ここでも、因果関係が逆転しているってわけだ」
しかし、成功してから近寄ってくる人間なんてどこにだって山ほどいるだろうから、それだけを根拠にあーだこーだは言えないな。
「まあ、仕方の無い事だろうな。この街で重要なポストに就くには火霊祭の上位入賞がほぼ必須とされているからな。だからこそ、大会への力の入れようも段違いと言うわけだ」
「この街でのし上がって行くには、火霊祭での活躍は必須か」
「さらに贅沢を言うのであれば、自分以外にも上位入賞者とは仲良くやっておきたいところだな。派閥争いになれば、そういった者達同士で徒党を組む事もあるらしいぞ」
火霊祭で上の順位まで生き残っても、他にも似たような奴がいるせいで絶対的な影響力を持つに至れないというわけか。
「派閥争いなんて、どんな組織にだってあるだろう? どんな組織であっても、そこに火霊祭上位入賞者がいてもおかしくないくらいには人材が集中しているわけか」
「まあ、そういうわけだ。……因みにだが、この派閥争いは火霊祭本番にも影響があるらしいぞ」
選手同士が徒党を組んで上の順位を目指したり、ライバルを妨害したりするわけか。それ自体は別に何の問題も無いが……オリヴィエの口ぶりからして、そもそも大会の予選が始まる前から連携している節があるな。




