武器としてみたら論外
「まあ、そういうわけだ。盾を常備するというのは案外珍しい事のようだな」
「なるほどね」
「……と、言うよりそもそもの話、武具の類に魔法を付与する事そのものが一般的とは言えないところがあるな」
「なに? そういうものなのか?」
意外だな……一定以上の水準の武器ならだいたいそういうものなのだろうと思っていたが。
「ああ。万に一つ壊れた際に、修理するのにかなりの手間がかかるからな」
「壊れた場合か……普通に廃棄して新しいのに交換するとかじゃダメなのか? 普通の武器だってそうすると思うが……?」
「まあ、それが出来るならそうした方が良いだろうな。だが、ごく普通の武器ですらストックに余裕がある者なんて稀だ。それがましてやいつ使う機会があるのかもわからないストックに魔法効果を付与した武器を保管しておくか? という点だ」
言われてみると……確かに予備として持っておくのはかなり稀な気がするな。
「壊れたらそれでおしまいか。確かに普段使いじゃなくてとっておきの奥の手として隠し持っておくのが普通かもな」
「ああ。それが当たり前の流れだ。だが、そう考えれば考える程、魔法効果を付与した武具を使う頻度が減って来るわけだ。結果として、より安全に、より壊す心配をする必要が無い状況で魔法効果を付与した武具を使う事が求められるようになっていき……最終的に辿り着いたのが、魔導書や杖になる」
「あー……最終的にそこに落ち着くのか……」
「当然の成り行きだな。敵からの反撃を一切考慮せずに一方的に攻撃し続けるのが一番効率の良い運用方法だからな。それを実現するためにとにかく長い年月をかけて射程距離が追求された」
射程か……戦いにおいて、間合いの長さは絶対的とまでは言わないまでも、圧倒的である事は確かだからな。射程の延長は当然の発想だな。
「武器や防具に魔法を付与するくらいなら、魔法に特化した道具を作った方が遥かに合理的ってわけか……」
「全体のバランスを考えなくて良いとなれば、構造も簡略化出来るし、利点は多いな。それこそ魔導書に関して言えば、耐久性に関しては水に濡れても火がついてもダメで、ハサミ一つで破壊出来る程度の強度しか備わっていないわけだからな……武器として評価する事もおこがましい程の繊細さだぞ」
……まあ、言われてみたらそうなんだが……結局は本なんだからそれが当たり前な話だしな。それでも武器としてみたら論外というオリヴィエの言い分も理解出来るが。




