武器の差別化
「なるほどな……人々からの評判で人気が増すのには時間がかかる。それよりも早く次の製品が発表されたり、もっと性能の優れた物が作られれば人気は埋もれていくだけか」
「商売をするからには競争の要素もあるからな。評判になる前に似たような商品を被せて来る可能性だってあるハズだ。特に武器の類なんて他と被らないようにオリジナリティを出すような物でも無いだろ?」
どんな商品にも広報や宣伝が必要とされる理由がこれだ。武器で例えるなら、剣を作って売っている商人に対して、同じような質の剣を売り始めるという戦略が取れる。剣を欲しがる人数や本数なんて、相当なコレクターでもない限りは限度があるわけだからどうしたって一定数しか売り捌けない。こうなってしまえば売れ筋を見極める事に失敗した方が不利益を被る事になるのだが……あえて被せてきた方は売り上げが半減するのを承知の上で売るわけだからその点では有利なわけだ。
「……まあ、よほど複雑な機構でも搭載していない限りは似通った形状にならざるを得ないな……特にこん棒や盾に関しては差別化が難しいと聞く」
「複雑な機構や形状を取るメリットが殆どない装備だしな……いや、むしろ悪影響の方が大きくなる恐れまであるな」
剣のような刃物ならば、切れ味だとか強度や形状で色々と変わってくるとは思うが、こん棒や盾だと頑丈さや大きさ、重さなどの総合的な取り回しの良さくらいしか評価点が存在しないからな。技術レベルが同等ならば売れる数は二つに割れるだろうな。
「一応、デザインにも工夫をしているとは聞くが……そう頻繁には変えたりはしないだろうな」
「円の形状をした盾を急に四角に変えても客は困惑するだけだろうな」
いわゆる、ラウンドシールドだとか何だとかの種類はあるだろうな。問題は複数種類揃えておく必要がある程需要があるかという点だが、まあ、盾の形状に強い拘りを持っている客なんてのは少数派だろうな。
「盾の表面の模様を自由に決めたりするサービスもあるが……そんなのはどこもやってるしな」
「ああ。紋章みたいなものを付けたりするのか」
「みたいとかではなく、殆どがズバリ紋章だ。あれで所属をわかりやすく示す事が出来るからな。他にも稀に魔法陣を刻んでいる盾も存在するがな」
確かに乱戦に陥ったら、敵味方の区別の付け方はかなり重要だ。同士討ちになったら目も当てられんからな。




