知名度による効果
「ああ。物を売るにあたって、知名度は絶対的だ。どこの誰が使っていたとか、たったそれだけでも効果はある」
まあ、効果はあるだろうな。この世の中に商品なんてものは山ほどある。その山ほどある商品の中から特定の一つを選ぶには、どうしたって『何となく』という要素が多分に含まれるだろう。そんな中で自分の知っている誰かがそれを使っているという情報があれば……何となくそっちを使おうというのが人情というものだろう。
「そりゃ、それなりに効果はあるだろうな。お前のところだって、風霊祭が終わった後で、流石に売り上げは伸びただろ?」
「……? それは領地内での景気の事を言ってるのか? それとも、うちが売り捌いている武器の需要の方か? まあ、どちらにしても非常に伸びているが……」
「あー……領地内での景気って解釈もあるか……俺としてはお前のんとこの家業の話だ。だが、領地内での景気ってのもありだな。……領地内と言うか、国内って言い方でも正しいとは思うが」
風霊祭で俺とオリヴィエが優勝した事で、オリヴィエの家で売り捌いている武器の需要はそれ相応に高まったハズだ。それと、領地内での景気の向上もあっただろう。それも知名度の高さがなせる結果だな。
「なるほどな。うちの話か。確かに貴様の想像通り、武器の売れ行きは右肩上がりだ。どういう需要があるのかは知らんが、私が使っているレイピアと同型の物が特に売れているらしい」
「まあ、当然の流れだな。有名選手の使っている道具ってのは、それだけで需要があるものだろ」
レイピアってのが、微妙に何に使うのか想像しにくいが……護身用にしては大き過ぎるし、競技用か。レイピアを用いる競技人口はちょっと良くわからないが。
「そういうものか?」
「そういうものだろ。お前だって、憧れの選手の使っている道具を欲しいと思ったりした事は無いのか? 例えば靴とか……」
「憧れか……まあ、そうだな。私も昔、お姉様の持ってる銃を欲しがって、お姉様を困らせた事があったしな……」
「直接本人にねだるのは話の趣旨とちょっと違うような気もするが……まあ、そんなとこだろうな。それと同じで、自分が良く知っている人と同じ物というのは、それだけで購入動機になりえるわけだ」
これは憧れの人物などと言う、大層なものでなくとも同じだ。単に知り合いがそれを持っているからという理由で、買ったりする事も十分にありえる事だ。




