しがらみを断つの難しい
「繋がりが強いって……癒着でもしてるのか?」
「詳しい事は私にもわからないが……色々と噂は絶えないな」
まあ、それくらいの事でもなければとてもじゃないがただ一つのギルドにそこまで肩入れする理由がわからないな。
「一応、競りで売り上げを出すよりも、ギルドの売り上げの何割かを回収する方が利益は出るんだよな?」
「その可能性は高いな。だが、実際に試算してみると国の方が負担を強いられているとの事だ。これが疑惑の根拠の一つとなっているらしい」
「確かにな……損をするとわかり切っているのに、それでも支援するのは妙な話だな」
損を承知で支援をする……これ自体はそこまで難しい話ではない。所謂、先行投資という奴だろう。しかし問題なのは、その相手が国内でも有数の魔道具メーカーだという事だ。これから一気に伸びる可能性があるような、ベンチャー企業のようなものなら理解できるが……特別に支援を受けなくてもやっていけるところ……ましてや、押しも押されぬ人気のブランドなら、単にメーカーの方が得をするだけで終わりなハズだ。
「まあ、あのメーカーは火霊祭と密接な関係にあるからな。と、言うのも火霊祭の目的は世界最高の魔術師を決める大会だ。当然、使う道具もトップクラスのものでなければならない」
「そのトップクラスの道具って事で有名なのか」
「ああ。何せ彼らからしてみれば、自国で開かれる大会で、好んで使用される道具だからな。国外の選手ならともかく、国内の選手まで国外の道具を使っていたら面目が立たんだろう?」
「少なくとも一級品を取り扱っているメーカーとは認識されなくなるだろうな」
何せ世界的に注目度の高い大会だしな。そこで選手達がどこのメーカーの製品を使っているかなんて情報は興味のある奴からしてみれば要チェックの情報だ。それが優勝者のものともなれば、これ以上の宣伝効果も無いだろう。
「そんな中で選手達が好んで使う魔道具を作っているんだ。国内外でのその影響力は絶大と言うわけだ」
「その影響力が国の上層部にまで届いているのか……」
「そういうわけだな。そもそも国のトップにいる連中だって、過去に火霊祭に出場している連中が大半だからな。その時にメーカーから『応援』という形で魔道具を渡されている奴だって当然いるだろうな」
なるほど、国政を担う立場になってからの付き合いじゃなく、そもそもそういう立場になるための挑戦の段階で繋がりを持ってしまっているのか。それじゃあ、しがらみや繋がりを断つのは難しいな。




