例の樹木の使い道
「オークションか……実際に競りに出されるとしたら相当な額になるよな?」
「間違いなく高額で落札されるだろうな。上質な木材であるという以上に、火霊祭の戦場になったという物珍しさもある」
なるほどな。質だけじゃないってわけか。確かに質の高さが同等ならば、より知名度の高い方が好まれるだろうな。
「天井知らずの値段が付きそうだな?」
「質の高さにもよるが、より上質なものならば金に糸目をつけない者も出てくるだろうな」
「それだけの高い値段が付くなら、何故特定の組織だけを優遇するんだ? その杖だって比較的安価で販売したら儲けは少ないだろう?」
いくら世間からの顰蹙を買うからって、金をドブに捨てるような愚行だろう。
「それは、高級路線で進むためだろうな。値段が安価ならば、それだけ子供の手にも渡りやすいしな。そうやって高品質だとか高級だとかいうイメージを植え付けて、もっと上のグレードの道具を売るという手法だろう。因みに、例の木材は杖以外にも魔道具全般に使用されているぞ」
エントリーモデルとして売り捌いて、ハイエンドモデルを売るための導線にしているって事か?
「そう上手く行くのか? 低価格帯なら確かに国から渡されている樹木を使って蹂躙出来るだろうが……」
「それから、そもそも国が渡している木材の量と、商品として出されている木材の量がかけ離れているという指摘もある」
「……高価格帯の商品にも使用しているって事か。まあ、質の良い樹木を使っているんだから当然の話だな」
「ところが、安く仕入れた木材を使用しているのにも関わらず、他の最高級品の魔道具と同等レベルの値段で売っている」
安く仕入れる事が出来たから、コスト削減で値段が安くなるとか、そういう事じゃ無く、値段をそのままにして利益を増やしているのか。……まあ、安く仕入れて高く売るってのは商売の基本ではあるが……そこに国が関与してくるのは尋常じゃないな。
「安く仕入れたものを高値で売って利益を上げるってのは市場経済としては間違っちゃいないが……それは全員が平等に競合している状態であるってのが前提の理論だからな……国が均等にするどころか偏らせているってのは、かなり不味くないか?」
「だから国内外から批判が巻き起こっている。国内からしてみても他の魔道具メーカーは存在しているわけだからな」
まあ、これだけデカい都市なんだから製造関連の組織が一つだけって事は無いだろうな。




