樹木の行方
「まあ、批判は多いな。国内からすらも批判の声は上がっている。……が、得られる利益が大きいという事実がそれらを封殺しているのだろう」
「莫大な利益を出しながらも国内から批判されるって余程の事だぞ? それだけあくどい儲け方をしているのか、それとも利益が一か所に集まってしまっているのが問題なのか……」
それから考えられるのは、そもそも自然公園の木を伐採している事に関してか。そういう所の木を利益目的で伐採するっていうのは、色々と反発があるだろうからな。
「真っ当な金の稼ぎ方ではないという意見は多いだろうな。いや、結果的に自然公園の樹木が杖の素材として優れているのは事実なのだから、それを使って杖を作る事はそこまで批判されるような事では無い。問題なのはその樹木が競りに出される事も無く特定の組織に流されている点だ。批判の内容は専ら、一般の市場に流せという要求になっている」
それは……かなり難しい話だな。そもそも木を伐採する事そのものに批判が来ている可能性もある事を考えると、その用途は限られたものに限定している事の方が好ましい。……まあ、ブランドの商品として販売する事が真っ当な用途かと聞かれるとそんな事は無いと思ってしまうが……せめて何かのお土産程度の物を作るとかならまだ賛同を得られただろう。それはそれでもったいないと批判を受けそうだが。
「国が管理している自然公園の資源を特定の誰かに流してるってのは、確かに不信感を持たれるだろうな。しかし、オークションに出して売るっていうのもな。国が直接金を受け取るんだろ? しかも落札価格を秘匿する事も出来そうにないし……いくらで売れたかを公表するってのも中々のものだぞ?」
とにかく、国が管理している自然公園ってのがネックだな。世間からの認識としてはほとんど公共物と言っても良いくらいの代物だろう。それを売って利益を得るというのは……あまり見栄えの良いものではないだろうな。
「しかし、仮にも一市民に渡して利益に貢献するというのは国がやって良い事の範疇を超えていると思うぞ」
「そもそも一般人に渡してるのが変な話だしな。一から十まで国で管理して、作った杖は学校かどこかにでも寄贈するとかでもしないと批判は無くならないぞ? それだと肝心の利益が出せなくなってしまうが」
「まあ、何の得にもならない事を世間からのバッシングを浴びながらやるというのも不自然な話だし、どこかに売り捌くという結論は変わらんと思うぞ? だからこそ、真っ当な競りに出せと要求されているわけだからな」
まあ、国が特定の企業に格安で資源を渡して価格破壊を起こすってのは、市場の原理としてかなりの歪みを生む事になるだろうからな。




