逆立ちしたって勝てない
「批判か……まあ、由緒ある大会を開催しておきながらそれを裏で利用しながら金儲けしてるんだから批判の対象にもなるだろうな。……これってもしかして周知の事実だったりするのか?」
この大会が世間から批判を受けているって話は聞いた事はあるが、それも納得の話だな。本格派な杖が安価な価格で流通したら客はそっちに流れるのはわかり切った話だ。当然、競合他社はその安さの秘密を探し出す。探してみたらビックリだ……何せ国際的な大会で使用された土地から材木を伐採していたんだからな。そして大会と言う名目で世界中の高名な魔術師が戦い、その時の余波で土地に魔力が充満し、それを養分として木々が成長する。こんな事をされたら誰も勝てない。自分の懐の痛まない金、税金で賄われているんだから。
「ああ。これは良く知られている。そもそも杖を製造して販売、取り扱っている商人達が謳い文句しているくらいだからな」
「わざわざ自分からバラしに行くのか……」
「まあ、それには一応の理由はある。安かろう悪かろうという認識で杖を購入している魔術師ならば特に興味の無い話であるのに対し、ちゃんとより良い物を手に入れようとする魔術師ならば、素材の生産地は極めて重要だ」
いくらあの手この手で本格的な杖が安く出回っているとは言っても、それでも大衆向けに作られた大量生産された製品と比較したらかなりの高額という事になるのは目に見えている。
「どこで伐採したものか黙っていたら痛くも無い腹を探られる羽目にあうかもしれないな。それに隠そうにもいつかはバレるような話でもあるしな」
「ならば、宣伝文句にしてしまおうというわけだ。まさに逆転の発想だな」
「国としてはそれで良いのかもしれないが……反感を買っているところもあるだろうな」
安価で杖が手に入るのであれば、客から反発される事は少ないだろう。文句があるとしたらその土地から木材を調達する事の出来ない企業からの方が多いだろう。そういったところからしてみたら逆立ちしたって価格競争で勝ち目が無いのだからな。




