公園が選ばれた理由
「……まあ、私達が気にすべきは目の前の試合だけだ。これを見てみろ。この範囲が国立自然公園の敷地だ」
オリヴィエは地図を広げてテーブルの上に置くと、俺に公園の場所を教える。
「これか。……国が管理運営しているだけあってかなりの大きさだな。……大都会のど真ん中にこんなものがあるとは……どういう理由で保護されているんだ?」
国が管理しているとはいえ、都会にある自然公園だからそこまでの大きさではないだろうと思っていたがこれは……俺の予想を遥かに上回る範囲だ。これだけの範囲を土地開発もせずに保護するからにはそれ相応の理由があるのだとは思うが……良くわからんな。
「貴重な生物が多数生息しているからだと言われているが……本当にそんなに貴重ならば戦闘の場には選ばれないハズだ。恐らく、大量の魔力が漂っている特殊な環境なのだろう」
「……特殊な環境だと、土地開発はされないのか?」
「魔力の多い土地なら、自然物……特に樹木の類が魔力を吸い上げて成長する事になる。これが杖だとか何だとかに使われたりするんだ。ここで戦いが行われる理由は漂った魔力の均しか……それか補充が目的だろうな」
「植林してるって事か……?」
魔道具の素材として売り物になるように栽培しているのか。そしてその土地で魔術師達を戦わせるというのは、ある意味で堆肥をばら撒いているようなものか。
「植林と言うよりは、正確には養殖だろうな。本来なら霊峰だとか、禁足地だとかで伐採される木材が素材としては最高級なのだが……色々と危険だからな。それが国で管理されている公園ならば、安価かつ安全に集める事が出来るわけだ。……もっとも、近くに巨大都市があるせいで品質の方はガタ落ちになるが、一般的に流通される分には申し分ない品質だ」
「わざわざそんな風に育てた木を使ってるのか、魔術師が使う杖ってのは」
「いや、一般的には伐採して加工の終わった木材に魔力を染み込ませる。伐採する前の段階で魔力を吸わせるのは本格派の杖だな」
「なるほどな。本格派の杖を安価で流通させるために魔力の多い環境を維持しているわけか。そしてその魔力の供給源として、世界中から高名な魔術師を集めて戦わせているわけか。……流石だな。まったく無駄が無い」
それで定期的にあの自然公園が戦いの場として選ばれるわけか。大会を執り行う闘技場としても使えるし、そしてそれが高級な杖の材料にもなる……一石二鳥の事業と言えるわけだ。




