開催期間の短さ
「ああ、その通りだ。今日の朝刊に自然公園の記事が記載されてある以上、選手達のほぼ全員が何らかの形で自然公園が使用されると予想していているハズだ」
オリヴィエは今日の新聞に載っていた記事の内容を根拠に、選手達がどれだけの情報を入手しているかを予想していた。恐らく、その予想は概ね正しいと言えるだろう。僅かに外れている可能性があるとすれば、前情報等は一切仕入れずに出たとこ勝負で挑む選手がいるかもしれないという部分だ。もっとも、これはその選手の性格に起因するものだからどれくらいの割合でいるのかは見当も付かないがな。
「だが、どのタイミングでどのように使用されるかはわからないわけだろう? まあ、それは俺達も同様ではあるが……」
そう。厳密には俺達が自然公園にて戦う事はまだ決まった事じゃ無い。さっきの説明会でそういう風に話が進んだだけで、自然公園はもっと別のタイミングで使用される可能性も勿論ありえるのだ。
「一応はな。だが、他に十分な広さの土地が無いというのも事実だから、自然公園の一点読みで問題は無いだろう。そして、私達の出番が一回きりだという点から考えても、どのタイミングで使われるかは特定出来たと言っても良いだろう」
「どのように使われるかに関しては、今回呼び出された人員から察するに……戦闘目的。つまり、『いつ』『どこで』はわかっていて、『何を』するかは……ある程度の方向性はわかってるわけだ。この情報は選手達には知られていない事になる」
「そういう意味では、考える内容はかなり絞り込めているな。この点は私達の方が圧倒的に有利だ」
選手の視点で考えると、自然公園が何らかの形で利用される事は予想が出来ても、いつ使われるかは特定出来ないだろうな。最初の試験に使われるのか、それとも最終決戦の舞台として使われるのか……? ……いや、最初の試験で使われる事はありえないのか。そんな事をしたら、会場に集めた数千人の選手をいきなり移動させる事になる。
「他にわかっている情報は無いのか? そっちに思考を割かれていれば、俺達の策が上回る可能性は上がるぞ」
「特には無いな。まあ、強いて言えば開催期間が非常に短いという点くらいか。合計数千人の中から一人の優勝者まで絞り込むにしてはあまりにも時間がタイト過ぎるという点から、かなり危険な競技が多いだろうとは言われている。そして、実際そうなるだろうな」
確かに……初日に生き残り戦をやらせるんだから、その次の日の競技に支障をきたす事は自明の理だ。運営はそういう、いかにして自分の体力は温存させるか、そしてライバルに消耗を強いらせるかを戦略に組み込む事を意図している。とにかく激しい蹴落とし合いを煽って選手達を心身ともに消耗させるのが狙いだな。それもこれも限られた期間で一番を絞り込むための荒療治みたいなものと考えれば説明が付く。




