話し合いの前に必要な物
「確かに夕食を食べ終えてから集まっても良いのだが……善は急げとも言うだろう?」
「まあ、それはそうだが……」
明日の大会において、考えられる事は山ほどあるわけだからな……時間は長く取れて困る事は無いハズだな。
「なら、このまま直接部屋に向かうぞ」
「それは良いが、話し合うにしたって準備ってのが必要だろ?」
「準備だと? 何が必要だと言うのだ?」
「まずは俺達が戦うであろう自然公園の地図だな。どういう地形なのかわからん事には作戦など立てられん」
恐らくそこだろうという予想は立てられても、その場所に関する情報が何一つとして持っていない状況では話にならないからな。
「それならば気にすることは無い。大まかな地図ならば私が持っている」
「そんなのまで持ってるとはな……随分と用意が良いな」
「国立自然公園ならば、有名な観光地の一つとして、ガイドブックに載っているからな」
そう言いながらオリヴィエは懐からガイドブックを取り出した。
「そういえば買ってたな……その公園ってのはどんな場所なんだ?」
「公園とは名ばかりの森だな。自然の状態が維持されていて、多くの生物が生息しているようだ」
「そんな場所で戦っても良いのかよ……? 下手したら辺り一面が火の海になったり吹き飛んだりしてもおかしくないんだろ?」
「そういう話をするなら、この街は国の経済の中心と言っても過言では無い中央都市だ。こんな都会のどこかで火の海が上がったり、どこかの区画が吹き飛んだりでもしたら、それこそ国が傾く事になりかねないぞ」
……まあ、都市部で大混乱が発生したら経済はパニック状態に陥るのはその通りだろうな。
「じゃあ、競技そのものをもっと別の場所で……って、そうなると役所仕事が山のように増えるんだったか」
「ああ。それを考慮した上でも他の場所でやった方が良いという意見も多いとは思うが……この街だけで完結させるべきだという考えも根強く残っている。観客からしてみたら、選手を応援しにはるばるこの街までやって来たのに、当の選手は全く違う場所で敗退していました……という事になりかねんからな」
「それはあまり見たくない光景だな」
「それだけではないぞ。選手の中には、一目見ようと多くの人が集まってくるような選手もいる。そんな選手が来るのが事前にわかっていたとして、その時が来るまで宣伝もせずに隠し通せると思うか?」
……なるほどな。スター選手の人気にあやかろうとするならば、事前に公表して人を集めさせた方が良いだろうからな。火霊祭の会場のチケットは毎年売り切れになる程の人気……チケットを買えなかった人が集まって来る可能性は十分に見込めるだろうな。




