遠くは難しい
「わかってはいたが、やはり詳しい事は教えてはくれないようだな」
解説役の人の説明を聞き、オリヴィエは興味無さげな声色で呟いた。
「だが、どうやら複数の場所が用意されていて、そこで戦う事はわかったぞ」
「まあ、五百人全員を同じ場所で戦わせるというのは無理があるだろうからな。そして、その戦闘場所もある程度目星がついている状態というわけだ」
「どんなに情報を隠そうとしても、大勢の魔術師が戦えるような場所を確保するとなるとそれ相応の広さは必要になるからな。完全に隠しきる事は不可能だろうな。……そう考えると、現実的に考えたら、完全にダミーの場所も確保して情報をかく乱させるって方法くらいだろうな」
この国のどこかで戦うとかなら、場所の特定は困難を極めるだろうが……火霊祭の会場付近という制限を考えたら場所は間違いなく絞り込まれるだろうな。
「国立自然公園はフェイクの可能性もあるという事か? しかし、この辺りで数百人単位の魔術師が戦えそうな開けた場所がそこくらいしか無いというのも事実だぞ?」
「前の年とかはどうしてたんだ? もしかして結構な頻度で使われたりしてたのか、自然公園って?」
オリヴィエが他の候補地を思いつかないという事は、一般的な常識で考えたらほぼそこが唯一の選択肢って事になりそうだな。……一応、この辺りの土地勘が無いからわからないだけで、もっと他にも候補地になりそうな場所はあるのかもしれないが……あまり考えても仕方ない話か。
「何年かに一度くらいの頻度で何らかの形で使われている印象はある。それだけに毎年新聞記者が集まってたりするようだぞ」
「完全に運営の行動を読み切ってるって事じゃないか……? 転送魔法か何かで遠くの地で戦わせるとかは出来ないのか?」
「可能だとは思うが……遠くでやろうとすればする程、会場の準備に手間がかかるぞ? 単純に話を通さなければいけない役所関係が一気に増えるな。ただでさえコストカットが叫ばれてる昨今にそんな手間のかかった事が出来るかと聞かれると……微妙なところだろうな」
そうか……場所が離れていたら、自治体だとか役所の管轄が別のところになるのか。そうなると連携しなきゃいけないところが一気に増える事になって……時間も金も増えてしまって現実的とは言い難いな。




