やろうと思えば……
「数十人対五百人? そんな大規模な戦いでちょうど上位百人を選定するのは無理があるんじゃないのか? それに、選ばれなかった選手の順位を決めるのにも問題が起こるだろう」
オリヴィエは俺が口にした意見を聞くと、その問題点を端的に指摘する。
「そこは何か画期的なアイテムがあったり……しないか」
「仮にあったとしても、そんな大人数が一堂に会して戦える場所なんてこの街には無いぞ」
「確かに……人口密度的に無理があるか」
何百人も一か所に集まって戦える空間なんて存在するわけがないか。明日、この街には大量の人間が集まる。そんな中で俺達が本気で戦ったら、一般人は確実に巻き込まれる事になりそうだ。
「しかも中には地図の書き換えを求められるレベルで地形を変化させてしまう魔術師もいるんだ。どんなに広い場所で戦わせても、とてもじゃないが収まりきるものではない」
確かに……圧倒的な破壊規模を持つ魔術師が何人もいたら、この街に深刻な被害をもたらしかねないからな。大会初日からいきなり都市機能が麻痺しようものなら、そもそもの話として大会が中止になったり延期になったりで大変な事になると考えられる。これだけは何としても避けねばな。
「しかし、やろうと思えば大会を中止にさせるような無茶苦茶な魔法を使える魔術師もいるんだろう? それを考えたらどうやっても安全って事にはならないと思うが」
それが上位何人なのかまではわからないが、その気になれば大会を滅茶苦茶に出来るような魔術師が集まってるわけだ。
「まあ、そこは上位の選手を信じるほかないな」
「確かに。選手達からしてみたら、途中で大会が中止になるのは避けたいはずだ」
「ああ。そんな事になったら、今までの準備や苦労が全部水の泡になりかねない」
そうなったら、観客席からのブーイングも相当なものになるだろうな。高い金を出して観戦しに来ているのに中止じゃ下手したら暴動が起こりかねない。しかも最悪な事に、その周囲には一般客もいるから、扇動する奴がいたら一気に収拾不可能に陥ってしまう事だろう。




