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「ん、お前らも今部屋を出るところだったのか」
部屋で待機し、頃合いを見て部屋を出ると、ちょうどオリヴィエ達と鉢合わせした。
「む、奇遇だな。……まあ、と言っても説明会の時間を考えればこの時間帯に部屋を出るのは自然な事ではあるがな」
「それもそうだな」
「当然、このタイミングでこの階の部屋から出て来る宿泊客は、十中八九審査官だと考える事が出来るな」
「あまり周囲の客を詮索するな。向こうだって俺達とは関わり合いたくないと思ってるハズだ」
オリヴィエの言う通り、この階で泊まっている客の殆どが大会の運営から審査官として呼び出された魔術師のハズだ。……まあ、もしかしたら、他にもそれ以外の大会関係者も宿泊しているのかもしれないがな。
「……まあ、それが道理だな。運営から呼び出された理由こそ同じであっても、私達が大会に臨む理由は人によって異なるハズだ」
「ああ。不正を防ぐために、身内の審査は出来ないようになっているらしいからな。これは逆に言えば、身内には勝ち上がって欲しいと考える奴がそれだけ多いって事でもある。人情を考えれば当然の事だな」
今回、審査官として呼ばれた連中の共通点は今のところ戦闘能力の高さだ。しかし、それ以外に関しては言ってしまえばそこらの一般市民と大差無いレベルだろう。何せ、審査官としてというか……審判としての教育を受けてきたわけでは無いのだからな。
「他の国の審査官からしてみたら、私達はむしろ負けてくれた方が良いとさえ思っているだろうからな」
「俺達も一枚岩じゃないってわけだ。初めから同じ志を共有出来るとは思ってはいないがな」
そもそも今日初めて顔を合わせるって連中が山ほどいるんだ。まさか明日の大会に向けての親睦会ってわけにもいかないだろう。
「まあ、そこのところについては、大会の運営もお織り込み済みだろう。そういった点を考えたうえで、競技は考えられているハズだ。そもそも一人で審査を行う可能性もあるのだからな。……もっとも、一人で……という事は無いだろうがな」
「まあ、初心者には荷が重すぎるわな」
「それもあるが、今回、審査官に選ばれた魔術師は複数人での戦いで有名になっている連中で固められているハズだ。何せ一人で強いなら、選手として出場しているハズなのだからな」
まあ、俺とオリヴィエも二人一組で戦ったのが一般に知れ渡っているハズだしな。一人で強いなら、選手として出ているハズだから複数人で強い魔術師を集めましたってのは理に適っている。それをわざわざ一人にさせるって事は非効率的だし、やらないと考えるのが自然か。




