減っている観光客
「結果さえわかればそれで良いというのはまさにその通りだ。その道中で興味深い事は基本的に起こっていないわけだからな。その傾向がチケットの倍率だとか、観光客の減少だとかで表面化し始めているのが現状のようだ」
火霊祭の運営も楽じゃないってわけだ。
「観光客が減るとなると、問題は大きくなりそうだな?」
「ああ。まず最初に発生するのが経済効果の低下だ。この街は国内だけでなく、世界的に見ても極めて繫栄している都市の一つだとされている。当然、この街で商売をしている商人達はその経済規模を計算に入れて商売をしている。そんな都市で経済効果が低下する事になったらどうなると思う? その商人は一気に赤字転落だ」
「……まあ、都市部の店は移り変わりと言うか……潰れては新しい店が立ち上がるのペースが速いと聞く」
都市部で人が集まってくるとなれば、当然地価は跳ね上がるからな。その土地の使用料が払えなくなって潰れるなんてのは良く聞く話だ。
「確かにこの辺りも、毎年毎年どこかしらの店が別の店に変わっていたりするな」
「やはり……そういうものなのか」
「単純に人が多いだけに商品はあればあるだけ売れる事もあるし、逆に大量の在庫を抱える事も多いらしいな」
「……火霊祭での観光客の増減を見誤ると大惨事になりそうだな」
今は減少傾向にあるらしいが、それが発覚した最初の一年はどこの店も大損した事だろう。
「実際になっているな。仕入れを増やした事が裏目に出たら言わずもがな……かと言って、仕入れが少な過ぎれば稼ぐチャンスをふいにする事になる」
「この手の大都市で生活するとなると、費用も膨れ上がるからな……細々と続けるのも簡単じゃないな」
「毎年毎年違う店が立ったのではまともに税金も回収出来んからな。そういう意味でも火霊祭のような行事での失敗は許されないというわけだ」
まあ、コケたら皆が大損する事になるからな。
「そこまでイベントに拘るという事は……この国の事業は観光業の割合が大きいのか?」
「詳しくはわからないが……観光地として有名なのは確かだな」
本当に観光客の減少が経済に大打撃を与えるタイプの国って事か。
「火霊祭にはかなりの金額が投資されているんだろう? それを回収出来ませんでしたじゃ洒落にならんな」
「だからこそ大会を盛り上げるためにあの手この手で策を講じているわけだ。……私達は部屋に戻る。次会うのは説明会の時だな」
そう言いながらオリヴィエ達は部屋へと入って行った。俺も部屋に戻って時間がくるまで待機する事にした。




