序盤の人気
「序盤で敗退する事は決して許されない……上位層程その傾向が顕著に表れるとしたら、序盤での上位層同士での潰し合いは起こりにくくなるだろうな」
強力なライバルを倒す事のメリットよりも、負けた時のデメリットがあまりにも大きすぎて戦いたがらないわけだ。
「ああ。しかしそのせいで上位陣がトップを独占し続けているわけだ。これでは大会そのものの人気低迷につながりかねないということで、我々が呼ばれたというわけだ」
「第三者……それも、今度の大会での成績とは無関係の連中を集めたってわけだな。そしてそうやって集めた審査官を序盤に出す事で、番狂わせを起こそうとしているわけか」
成績上位者が潰し合わずに危なげなく勝ち進んでいくとなると、観ている側としては退屈に感じる事もあるだろうな。そこで大会とは関係の無いイレギュラーを混ぜる事で何かしらの変化をもたらそうとしているわけか。
「それが狙いだろうな。実際、火霊祭は最終日とそれ以外で人気に雲泥の差があるからな」
「まあ、当たり前と言えば当たり前の現象だな」
「最終日が最も盛り上がるのは当然の事だな。だが、それ以外の日が問題視されて来ているわけだ。大会の開催期間を短くするような風潮が出来てきたのもそれが理由だとされている」
長々と、何日にも分けて開催する程の人気は無くなってきているって事か?
「チケットは完売なのにか?」
「ああ。チケットは完売しているが、その倍率がどうも下がってきているようだ。大会の初日に来る旅行客も減少傾向にあるらしい」
「わざわざ現地を訪れずとも、新聞に記載される結果だけわかれば良いって感じか」
波乱が起こるのは上位陣同士の潰し合いが始まる終盤にかけてだけだから、序盤や中盤はわざわざ観戦しなくても良いと思われ始めているわけか。これは人気が無くなって来たというよりは、代り映えするのは終盤だけだから、それ以外の部分は結果だけ知れれば良いと思っている人々がそれだけ増えてきているという意味でもあるわけだな。……で、俺達にひと暴れさせて、序盤の展開にも興味を持って貰おうとしているわけだ。




