時間帯故の品揃え
「ここが食堂だ。……二時を過ぎている割りには客が多いな」
オリヴィエの案内に従い、食堂へと移動する。昼飯の時間帯を過ぎているのにも関わらず、利用客が多い事にオリヴィエ自身も驚いている様子だ。
「単純に宿泊客が多いんだろ? 明日の事を考えればこの辺りのホテルだって満室になる可能性は高いハズだ」
ただでさえ審査官が泊まるって事で宿泊客が多くなっているわけだからな。そうなれば食堂を行き来する人間の数も増えるというものだろう。
「まあ、大会の人の集まり方を見るに、満室なる可能性は高いだろうな。この手の店も、大会の開催期間が一日でも短くなると経営に大きく響くようだ」
「催し物で人が集まるのは当然の事だからな。その催し物が行われる日が一日減れば、その分、人が集まる日というのも一日減るわけだから……経済的損失は大きいものになるだろうな」
恐らく、一年間の中で最もホテルの空き部屋が完全に埋まる可能性が高いのがこの日から大会終了までの日までなのだろう。その期間が一日縮むとなれば、その影響は決して小さくはないのだろう。
「そこに関してはホテル側も承知の上だろう。一応、開催期間を短くするという意見は毎年出ていたからな。いよいよ本気となったら、ホテル側だってそれを考慮して経営しているだろうし、何とかなるのだろう。……私には良くわからないが」
「何とかなるにしたって、経営的に厳しくなるのは覆らないだろう?」
客が減ったらその分売り上げは下がるハズだからな。これで利益を出すには人件費のようなコストカットを行うしか選択肢は残されていないハズだ。
「まあな。それより、空いている場所が少ないんだ。さっさと座るぞ」
そう言いながらオリヴィエは客が座っていない場所を見つけ出し、そのテーブルに腰掛けた。
「テーブル席が空いていたのは運が良かったな」
「そうだな。それより、食べたい物を各自自由に皿によそって食べる方式のようだぞ」
なるほど、そういう形式の店か。
「全員で移動したら場所を取られる可能性もありそうだな」
「場所取りは一人もいれば大丈夫だろう。二人で三人分持って来れば良いんじゃないか? と言っても、並んでる料理も随分と目減りしているようだが」
「時間が時間だからな……これから新しく補充されるとも思えんし、残っている料理の中で選ぶしかないな」
こればっかりは遅く来た弊害だな。まあ、今日それ自体は何ら特別な日というわけでもないから別に問題は無いだろう。




