昼食はいつにするか
「そういえば……昼食はどうするつもりだ? 一応、ルームサービスも使えるが……食堂も使えるぞ」
「朝飯を食べ終えたばかりで昼食の話かよ……普通に食堂を利用すれば良いんじゃないか? ……いや、俺達が人目に触れるのは避けた方が良いからルームサービスを利用すべきか? 考えすぎか……」
一瞬、自分達は人前に姿をさらすべきではないと思ったが、そんなに慎重になり過ぎる方がかえって怪しまれるか。ごく普通の観光客を装って堂々と行動した方が良いだろうな。
「では、昼食は何時にする?」
「何時って……そんなの気が向いたらで良いだろう。そもそも昼食の時間ってのは何時から何時までなんだ?」
「十一時から二時までの三時間のようだな。これ以外の時間だと別途で料金が発生するようだ」
「なるほどな……他の顔も知らないメンバーと鉢合わせてもお互いに警戒し合ってストレスだ。早めに食べてしまおう」
今まではあまり意識しなくても良かったが、このホテルで会う人物は全員もれなく『俺達と同じ審査官』であるという可能性があるわけだからな。つまりお互いに正体がバレないようにコソコソと動き始める可能性が出て来るわけだ。プライベートな時間でそんなどうでも良い事でストレスを溜め込むのもバカバカしい話だし、出来るだけ鉢合わせせずに済む時間帯を狙うべきだろう。
「なるほどな……では、十一時頃か」
「ああ。その時間帯ならチェックインをしたばかりで食堂に行こうとは思わないだろう」
「なるほどな。ミーシャはどう思う?」
オリヴィエは俺の意見を聞くと、今度はミーシャに意見を求めた。
「むしろ、終わりギリギリに行った方が良いんじゃないの?」
「む、何故だ?」
「だって、遅くても正午にチェックインしてるなら、すでにお昼を食べ終わってからホテルに来てる人だっているはずじゃん。お昼も食べずにチェックインして、それで二時過ぎにお昼を食べようって人は少ないんじゃないかな?」
なるほどな……ミーシャの意見も一理ある。遅くても正午にチェックインしているんだから、二時を過ぎてから昼を食べにくるのはタイミングとしておかしい。食べてからチェックインなら、食堂に来る理由が無いし、逆に食べていないなら、もっと早く食堂に向かうハズだな。……まあ、当の俺達本人がそういう発想に思い至っているんだから、当然他の審査官も同じ発想をして、結局鉢合わせるという最悪のパターンも存在するのだがな。




