船室の鍵
「随分と細かい事を考えてるな……まあ、人並みに以上の好奇心があるわけでもないからこれ以上は詮索せんよ」
「そうしてもらえると助かる」
正直な話、ダンジョンに潜って知り得た情報をどこまで他人に教えても良いのかは俺には見当も付かない。そして、その内容から考えても軽率に決めて良いものでもないのだろう。……そうでなくても、あの依頼で得た情報の守秘義務に関してはこの国だけの話では無く、探索チームそれぞれの国で話し合いが行われているだろうから、どう頑張ってもすぐに結論は出なかったのだろうな。
「ああ。そういえば忘れていたが、今夜泊まる部屋を案内しよう。鍵を」
オリヴィエは思い出したように船員に鍵を持ってくるように指示を出す。
「こちらになります」
すぐに船員が鍵を持ってくると、三つともオリヴィエに渡した。
「貴様のは……これだ」
オリヴィエは渡された鍵のキーホルダーを見つめると、三つあるうちの一つを俺に渡してくる。
「この部屋番号が俺の泊まる船室か」
「ああ。飲食に関しては部屋の中に呼び出しベルがあるから、それを鳴らしてくれ。……それとも、ここ何か持ってこさせるか?」
「……いや、大丈夫だ」
どうせこの後は寝るだけだし、別に何か注文する必要は無いだろう。
「そうか。なら、すぐに案内しよう。おい、寝るなら部屋で寝ろミーシャ」
「……はーい」
寝ていたミーシャを起こすと、オリヴィエは俺達を船室へと案内するために立ち上がる。
「すぐそこだ。そっちが貴様の部屋で、その向かい側に私の泊まる部屋とミーシャの部屋がある」
テーブルから立ち上がり、通路の奥の方へ少し歩くと、番号の割り振られた部屋が幾つか並んでいる。
「この部屋か……」
「元々は船員が就寝するための部屋だからかなり狭いぞ。覚悟しておけよ」
鍵を開けて部屋の中を覗くとなるほど、ベッドと机、後は外を眺めるための窓が一つ付いているだけの簡素な船室だった。
「寝るだけだし、個室なだけ上等だ。……他の船員はどこで寝てるんだ?」
「別の階にある船室を使っている。交代制で常に一定の人数が働いているから、呼び鈴はいつ鳴らしても船員が来てくれるハズだ。気兼ねなく呼ぶと良い」
「なるほどな。何かあったら呼ぶとしよう」
「じゃあ、また明日。おやすみ」
「ああ。おやすみ」
そう言うと、オリヴィエは向かいの部屋の鍵を開けると、そのまま入って行った。




