リアクションすら取って欲しくない
「今後の事を考えるなら、今のうちに仲良くなっておいた方が良いんじゃないか? ……と、言っても、スコロはすでにあのギルドに所属しているから、引き抜きも楽じゃないとは思うが」
「無理に引き抜く必要は無いさ。王都にだって用事は幾らでもあるのだからな。あのギルドを積極的に利用していけば事は足りる」
自分のところで使うのではなく、王都で用事がある際にその都度ギルドに依頼する形にするのか……確かに、それが一番軋轢を生まない事になるだろうな。
「あの大貴族御用達のギルドになるとは……将来安泰だな?」
「良く言えたものだな……貴様だってあのギルドに所属しているではないか。部長もあのギルドを何度も利用しているようだし……私が何も知らんと思うなよ?」
クラウディア先輩もあのギルドに一枚噛んでる事を知っているのか……まあ、知っていてもおかしくは無いな。本人から直接聞いたにせよ、独自の情報網を使って取り寄せたにせよ、どちらもありえそうだ。
「知っていたのか」
「そこまで詳細には私にもわからなかったがな。むしろ貴様から直接聞き出したいくらいだ」
「……悪いな。守秘義務ってのがあってな。何をどこまで話して良いのか俺の方でも良くわかっていないんだよ」
話がある程度まとまったら、何をどこまで話して良いのかをクラウディア先輩から伝えてくれるってハズだったのだが……まだそういった連絡は来ていない。それだけあの時俺達が知り得た情報がヤバいって意味でもあるのだが……あるいは、もしかしたら一生何も喋るなって意味とも受け取れるな。それならそれで別に構わないが。
「あれから暫く経つだろう? それでも何も言えないのか?」
「それを決めるのは俺じゃないから何とも言えんな」
「余程の物を知ってしまったようだな……? 新聞や記事に載ってるような内容なら、教えてしまっても良いのではないか?」
「記事に載っているような内容までで良いなら言っても良い……と、言いたいところだが、その記事に載っている内容自体が信ぴょう性の保証された情報ってわけでもないだろう。俺の発言で裏を取ろうって考えてるなら、守秘義務に引っかかるんじゃないのか?」
正直、どこまで情報が出回っているのかは知らないが、雑誌の記事なんて眉唾レベルの与太話すら記載されてそうなゴシップ記事だってあるだろうからな。そういった何でもありの情報の中から、俺の発言から正誤の取捨選択をされたら、偶然で思いがけない情報がオリヴィエに伝わってしまう可能性があるからな。出来れば、リアクションすら取って欲しくないってのが、クラウディア先輩達の立場の人の心情だろうな。




