もしも順位が上がったら
「大会で上の成績を見込める奴なら周囲からの支援も潤沢に受けられるってわけか……道理だな」
「ああ。私や貴様の共通の知り合いで言うなら……スコロとてその一人だ。あの男も相当な特別扱いを受けているだろう?」
「まあ、な」
確かにオリヴィエの言う通りだな。スコロもかなり贔屓されている。学園だけじゃなく、ギルドだって上位の成績を残すって前提であいつに積極的に上位の依頼を斡旋している。これはスコロが火霊祭で上位の結果を出したらすぐにギルド内でのランクを上げて、より難しい依頼をやらせたり……あいつの名前を売りにして依頼が舞い込んで来るように宣伝してたりしてるわけだ。
「あの男に限った話ではない。火霊祭での活躍は、その選手が所属する組織にとってこれ以上ない宣伝になる。その結果として依頼が増えて懐が潤うなら、投資対象として成り立つだろうな」
「それだけじゃないな。例えばスコロが良い成績を残したとしたら、確かにあのギルドには依頼が殺到するだろうが……殺到するのはそれだけじゃない。当然、引き抜きだって殺到するだろう。あいつ本人にも、ギルドマスターにもな」
どこの組織だって喉から手が出る程欲しい人材になるハズだ。それにスコロは頭も良い。どういう行動を取れば自分にとって一番得かってのもわかっているだろう。
「引き抜きか。確かにあるだろうな」
「なんだ。まるで他人事だな? 場合によっては、お前が直接交渉する事だってありえるんじゃないのか?」
「……私がか? ……いや、まあ、そういう事になるのか……? 面識があるのだし……」
オリヴィエは面食らった顔で目を丸くさせながら俺に聞き返す。流石のオリヴィエもそういうところには頭が回っていなかったようだ。……まあ、そんな事を今の段階で期待しているってのも、年齢にそぐわない発想だし、無理も無いか。
「そりゃあ、お前の家だって優秀な人材なら幾らでも欲しいだろ? それがどれくらいの順位だとお眼鏡にかなうのかは知らないが」
「それは……私にもちょっと予想が付かないな……まあ、来年以降の事も考えると、今後の数年間の付き合いの中で色々と変わってくるだろうな」
まあ、数年に渡って好成績を残したりでもしたら、それだけ安定して優秀な人材だって証左になるわけだからな。『うちに来てくれたら良いな』なんて甘い期待は消えて『必ず手に入れる』と言う決意に変わるだろう。




