順位を上げる恩恵
「クジ引きにして完全に運頼みかよ……その運次第で五十位以内に入れるかどうかがわかれると思うと、くじを引く方は堪ったものじゃないな」
「そこは運営の腕の見せ所だな。人数が多い段階で一騎打ちをして、観客からのブーイングが起こったら……後でどんな記事を書かれるかわかったものではないからな。一騎打ちをさせるなら、もっと人数が減った時にやる事になるだろうな。……残り十人での一騎打ちなら、盛り上がるだろうし、その辺りのタイミングになると思うぞ」
残り十人か……確かにそこまで人数が絞り込めたなら実力も上澄みの中の上澄みが集まってるわけだから一騎打ちも甲乙付け難いものになるだろうな。
「そんな人数にまで絞り込めているなら、誰と勝負になってもどちらが勝つかわからない状態になるから盛り上がるだろうな。負けた五人の順位をどうやって決めるかって問題はあるが……その程度の人数なら何とかなるだろう」
まあ、そんな人数からなら参加者全員化け物レベルで強いって事になるだろうし、クジ引きで対戦相手を決めても運ゲーの要素は薄くなるか。
「ああ。負けた選手が意識不明の重体にでもなって搬送でもされない限りは残った選手で順位を決められるだろうな。直前の一騎打ちでそれぞれが疲弊しているだろうが……そこは仕方ないというやつだろう」
「負けた後の順位を上げるために体力を温存して戦いを終えるって考える奴は出て来るかもしれないが……そこは気にしても意味は無いか。負けた後の事を考えてさっさと降参するってのも作戦だろうしな」
勝てる見込みが薄いと見たら、五位以内に入る事は出来ないと考えて六位を狙うってのもありな選択だろう。見栄えは悪いだろうが……それでも順位を一つでも上げる事を優先させるならそういった作戦を取る選手はいるハズだ。頭が良ければ良い程にな。
「まあ、来年またチャンスがあると考えれば賢い選択だろうな。一つでも順位を上げれば来年の大会まで何かと有利に働くだろうからな」
「過去の成績が良いと何かしらの恩恵があるのか?」
「火霊祭そのものにはそんな贔屓は存在しない。……が、それを取り巻く環境には当然特別扱いはあるな。言ってみれば、学園で行われた推薦選抜や、その後の特別教育だってそれに当たる。その延長線上のようなものだ」
なるほどな。そりゃあ、周囲の人間からの協力を得られやすいってのは、当然の話だ。




