納得は重要
「相手も棄権してくれると思った……? 貴様にしては随分と楽観的な考えだな?」
「仕方ないだろ。あの王子様を戦闘不能に持って行こうとしたら、どうしたって障壁を破壊しかねない攻撃を撃ちまくる事になる」
俺から障壁を破壊するなんてヘマをするとは正直思えないが……あの時の状況だと何とも言えなかったからな。それに、俺の方が優勢な感じを出しながら棄権したから、向こうも乗ってくれるものとばかり考えていた。
「貴様のさっきの言い分だと、向こうが先に障壁破壊のミスを犯す事になりそうだが……?」
「それはそうなんだが……時間制限までにそんなヘマをしてくれるかどうかはわからなかったからな。それに、あの王子様のミスが原因で優勝じゃ、お前の方だって不完全燃焼だろ?」
俺の方はそうでもなかったが、オリヴィエの方は相手の聖騎士……フォルジュとは一族単位での相当な因縁があったようだったからな。そこら辺の因縁の決着がかなり有耶無耶になりかねない事態に陥る事になるぞ。
「……まあ、それはそうだな」
「そこら辺の細かい事情は俺にはわからないが……観客に人達の中でならそれなりに有名な話なんだろ? それを台無しにするってのも気が引けたんだよ。お前らの戦いとか完全に無関係で反則したからそれで決着じゃ、誰も納得しないだろ。実際に戦ったお前らも含めて」
因縁の戦いだから、ギリギリのところで賭けが成立したって部分も大いにあるだろうからな。それだけあの大会の決勝戦は世間から注目されていたし、期待されてもいたって事だ。納得されない決着じゃ、誰も得しないだろ。
「……まあ、その点に関しては感謝している。結局のところは私が実力で相手を制していないと、後で誰に何を言われるかわかったものではないからな」
「ろくに戦わずに優勝が決定なんてしたら、観客達は好き勝手な事を言うだろうな。実力ではあっちの方が上だったとか」
この手の議論は後を絶たないからな。しかもあの二人やオリヴィエの場合、妙な派閥だとか……そういった面倒なものまで絡んでくるだろうからな。結局は審判に即失格されても文句を言えないような致命傷を相手に負わせながらオリヴィエは敵を圧倒していた。……まあ、それで本当に致命傷だったら、大問題に発展していたからな。一命をとりとめたのは良かったが。




