もっとスマートな勝ち方
「……まあ、あの王子様が負けない事にはどう頑張ったって勝ち目は無いって事になるからな。オリヴィエの方は因縁のある相手だって事を考えると、必然的にあの王子様の相手は俺がするって事になるな」
まず最低限度の必要条件として、俺があの王子様に勝てる可能性はゼロじゃないと観客に思わせる事……これが無ければハッキリ言ってお話にならないレベルだ。その可能性があって初めて賭けをするかどうか考慮する事になる。
「そう単純な話でもないがな。二対二のコンビ戦なら勝敗を決するであろう要因は他にもたくさんあるだろう?」
「そりゃ、あるだろうな。あの時、実際に勝ったのは俺達ではあるが……もうちょっとスマートな勝ち方はあったしな」
「なに? 本当か? どんな方法があったのだ?」
オリヴィエは少し驚いた様子で俺を見つめて来る。
「結果的な勝ち方は同じだよ。あいつらに反則をさせる。それだけだ」
「反則……か。確かあの時の決め手は、障壁の破壊による反則だったな」
「ああ。実際に手合わせしてみてわかったんだが、あの王子様は力の加減が俺より下手だったからな。あのまま延々攻撃を撃ち合っていれば、あの王子様が誤って障壁を破壊してしまう結果に終わっていたハズだ」
まあ、俺の方が間違って障壁を破壊してしまうって事態に陥る事が無かっただろうから、ひたすら持久戦に持ち込んでいればいつかは勝てたハズだ。
「なるほどな。ルール上でハメ倒すのか」
「まあ、これはこれで問題は山積みだがな。そもそもあの大会には時間制限があった。その制限が来るまで粘られたら後は審判の判断次第だ。その審判の判断基準が俺達には不透明なせいであまり期待出来なかった事情はある」
あの大会の試合時間は三十分だ。これを過ぎたら審判の判断にゆだねられる。正直な話、その程度の時間なら粘り切られていた可能性もある。あれが決勝戦限定ルールで制限時間が数時間……もしくは無制限になっていれば間違いなく相手のミス待ちを徹底出来た事だろう。
「制限時間いっぱいまで障壁破壊が発生しないのであれば、貴様が今言っていた作戦は失敗していた可能性があったな?」
「ああ。あの王子様は試合中、ずっと手加減していたからな。……正確には本気を出せないでいたな。でないと障壁なんて蜘蛛の巣みたいにいとも容易く引きちぎっていた事だろうからな」
恐らく、あの王子様があの大会で一番苦戦していたのは、あの障壁を破らないように気を遣う事だったハズだ。何せ少しでも本気を出せば反則負けだったわけだからな。相当窮屈な戦いをしていた事だろう。




