賭けに参加出来た奴
「……まあ、内容よりも結果に拘る奴は掃いて捨てる程いるだろうな?」
とは言っても……本当に結果が出るまで全く興味を示さずにいられる奴はほぼ皆無と言っても良いとは思うがな。大金がかかっていれば、猶更見守っていたいと思うのが人情というものだろう。大金を賭けておきながらその結果が出るまで別の事をしていられるというのは……ある意味では異常とも言える。
「その通りだ。そもそも試合が行われている会場だなんて、公共性の高い施設内で賭けの内容なんて大っぴらに話せるわけないしな。ましてや各国の発言力や影響力のある人物が集まる可能性の高いVIP席じゃなおさらだろう」
「まあ、表向きには気安く話せる内容ではないだろうな。それこそ聞かれた相手によっては顰蹙を買いかねない。しかし、大金を賭けてるのに試合を見ずにいられるか? 無理の無い金額ならともかく、普通に考えたら気が気じゃないと思うが」
「賭けられる金額自体に制限があるだろう。そもそもあの時、賭けが成り立つなんてほぼ全員が考えて無かったのだからな。当然、賭けが成り立たないと思ってる試合のチケットを買うギャンブラーは少ないわけだ」
……確かに、そもそも賭場が立たないと思ってるんだからわざわざ観戦しようと思わないか。それ以前にこの国に足を運ばない可能性もあるのか?
「……って、事は……決勝戦直前になって急遽賭場が立ったのを知り得る人間は相当少ないのか……? いや、正確にはそれを知った時点ではすでに賭けの締め切りが終わってしまっていた奴が大半になるという事か」
仮に家か何かで観戦していた人からしてみたら、賭場が立ったからと聞いても、そこへ辿り着く頃には締め切ってるって状況になっているのが普通だ。つまり、あの時賭けに参加出来ていたのは、賭けが成立するかもしれないって可能性に賭けていた奴か、もしくは当時別の賭けに興じていたコミュニティの運営が、賭けが成り立つと判断して賭場を立ち上げ、それに偶然参加出来たギャンブラーに限られるって事か。
「その通りだ。賭けが成り立つ瞬間があるとしたら、それは私達が決勝進出する事が確定して以降だ。でもなければ参加者がどちらに賭けるか判断出来ないだろうからな」
まあ、あの二人が優勝するかしないかの二択で丁半博打は可能っちゃ可能だが……そんな漠然とした内容じゃオッズが偏り過ぎて話にならないだろうからな。あの時決勝進出を確定させた俺達の実力を具体的に把握してなきゃ、本当に偏った確率での丁半博打だ。それじゃ俺達に賭ける奴が少な過ぎて賭けが成り立たない。




