内容への興味、結果への興味
「まあ、決勝戦直前の賭けに関しては限られた者にしか情報が行き届かなかったようだな。そもそもの話、賭けが成立してなかったのだから仕方ないが」
「賭けが成り立たないって状態で観戦に来たのに、急に賭場が開いても持ち合わせが無かったりで参加出来ない奴は多数いただろうな」
少なくとも大会が始まる前の段階で賭けが成り立ったのは、ナタクが胴元をやっていた賭場だけのハズだ。そこに参加していない人にとっては、それぞれの試合でどっちが勝つかを賭けるという、比較的地味な内容の賭けになると予想して観戦していたハズだから……金はそこまで持ち込んでいなかっただろう。
「そういう事になっていただろうな。結局、直前での賭けが成立したのは一部のVIP席だけだったようだ」
「VIP席? じゃあ、観客席から賭ける事が出来たのか……?」
「流石に会場の観客席からでは無理だ。だが、別の場所でならその限りではない」
「会場の中じゃなく、もっと別の場所で映像で観戦していたVIP達は賭けに興じる事が出来たというわけか」
確かに……会場内で堂々と賭けを執り行うってのは、賭けに参加していなかったり、そういった事に興味が無い一般的な観客達からしてみたら迷惑以外の何物でもないからな。それならいっその事、賭けに興味のある奴だけが集まっているコミュニティで勝手に盛り上がってもらってた方がまだマシというものだろう。
「ああ。そもそもの話をすれば、わざわざVIP席を取って、間近で決勝戦を観戦しようというのは試合そのものに興味のある者達ばかりになるだろうからな。単に賭けがしたいのであれば、わざわざ高い金を出してまでVIP席を取る必要も無いだろう」
「まあ、無駄に金を使ってしまってはその分、軍資金は減ってしまうだろうが……VIP席を取れるならかなりの金持ちだろ? そんなに気にするものなのか?」
チケット代すらも賭けに注ぎ込みたいと言う奴がいるだろうってのは否定しないが、そんな金まで賭けに使うのは完全にギャンブル熱狂者か、もしくはチケット代の出費すらキツイと感じる程には経済的に厳しい立場にあるかのどちらかだ。どちらにしてもVIP席を取れるような連中には無縁の話だと思うが。
「賭けにも試合にも興味があるというのであれば気にも留めないだろうな。だが、どちらか片方にしか興味が無いのであればどうかな? 試合の内容では無く、試合の結果だけが知りたいと考える者達がわざわざ観客席を用意するとも思えんだろう」
まあ、中には間近でみるのが醍醐味と考える奴もいるだろうが……金が増えるのか減るのかにしか興味の無い連中がいてもおかしくはないな。




