もしも賭けるなら
「まあ、優勝者は基本的に計り知れない程優れた魔術師という評価になるわけだから……その実力を正確に推し量る事は難しいだろうな。当然、いつが全盛期かなんてのもわかりっこない」
「……だろうな。魔力と体力のピークを維持しつつ、経験を積めば実力は伸びるだろうし、それを考えれば優勝した後でなお全盛期を迎えるって事もありそうだ」
「そういう選手が何度も優勝を重ねていくわけだ。それかもしくは最初の一回限りでその後は一切大会に出場しない場合もあるがな」
どっちかに偏るわけか。
「優勝は最初の一回だけで、その後は優勝を逃し続ける奴はいたりしないのか?」
「ん? ……それは……ちょっと思いつかないな。私の知る限りではいないハズだ。そもそもそういう手合いは奇跡的に運良く優勝を手に入れたか……なんにせよ、実力の程はわかりやすい事になるからな」
「まあ、それもそうか」
あまりにも勝ち過ぎて実力の底が見えないって話だったしな。誰よりも強くて誰よりも弱いってのが把握できるなら、底知れないって表現にはならないか。
「そういうわけだ。だから今度の火霊祭の優勝候補は本当の本命はほんの数名……もしかしたら優勝を狙えるかもしれないという選手がその下に数十人単位でいるという形式になる。賭けるならその数名に絞るべきだな」
「賭けか……お前も知ってるって事は相当有名なんだな」
まあ、こいつなら知っていても不自然な話でもないな。
「この手の話はどこでもあるからな。大会の知名度や規模が大きい分、大量の金が動くらしいぞ」
「それに、優勝候補が一人に絞り込めないってのも大会を盛り上げる要因になるだろうな。誰が優勝するかわかりきってるんじゃ賭けとしては盛り上がらないだろうからな」
「私達の時みたいにか。……一応、決勝戦直前にはギリギリ成り立っていたとも聞くが……もっとも、それでもオッズは偏っていたらしいがな」
……まあ、決勝直前まで行けば単純に二択問題だからな。多少はマシにもなるか。
「直前って事は賭ける時間だって限られてるだろ? それに俺達が決勝進出を決めてから賭場が開いたとしても、それを把握して参加出来る奴は相当限られているだろうしな」
普通に考えたら、そもそもそんな賭けが行われていた事を知っていた奴の方が極少数派になるだろう。結果として、参加者そのものが少ないのだから集まる金額も少なくなって、胴元の稼ぎは限られたものにしかならないハズだ。




