全盛期の時期
「ああ。そもそも火霊祭の目的ってのは世界最高の魔術師を決定するって話なんだろ? そんな毎年毎年決める必要なんてあるのか?」
なんとなくだが、そんなに頻繁に世界最高の肩書が行ったり来たりしてたらありがたみが薄れる気がするのだが。
「そこは、色々と大人の事情と言うやつがあるんじゃないのか? それに……さっきは世代交代が早そうだと言ったが、意外とそうはならない可能性もありそうだしな」
「世代交代が早くならないと?」
まあ、毎年開催して桁違いの経済効果を出してるみたいだし、頻度を下げる理由は開催国には無いだろうな。
「ああ。一度でも優勝を逃すと次のチャンスは四年後になるのだろう? それではモチベーションを高く保つ事はかなり難しいという事になる。大会に挑戦しようとする者は少なくなってしまうだろう」
「ああ。そうなるだろうな」
「と、言う事はだぞ? 挑戦者の絶対数が激減するのだから、優勝経験者はより勝ち残りやすいという状況になるのではないか?」
優勝の見込みの無さそうな選手がはなから出場を避けようとして、参加選手が毎年似たり寄ったりになってしまう可能性があるという事か。
「……人数が減る分、まぐれで格上を倒す可能性は下がるって事か?」
「そういう事だな」
「その場合、優勝者は十年近く全盛期を維持している事になるのだが……魔術師のピークってのはそんなに長く続くものなのか?」
こればっかりは正直な話、この世界での相場と言うか……一般論を知らないからな。普通に考えたらそう何十年も一線級を走り続けるなんて真似は他を圧倒的なまでにねじ伏せる事の出来るような突出した個人に限られると思うのだが……案外、魔法に関しては年齢による衰えが肉体面と比較して緩やかなのか? それでも体力が求められる状況ってのもあると思うが。
「人にもよるな。そもそも魔術師の場合、何歳に全盛期が訪れるのかそのものにバラツキがあるからな」
「そういうものなのか?」
「当然の話だが、単純に肉体的なピークは若い頃に集中するな。しかし、ピークを過ぎ去った後には膨大な経験値が残る事になるわけだ。それ次第では全盛期はむしろまだまだこれからという話になるだろう」
なるほどな……肉体的に衰えが見えてきたとしても、それを補って余りある程の何かさえあれば、全盛期はもっと後の事になりえるのか。




