結局は勝った奴が正しい
「お山の大将ね。……だが、その程度の規模じゃないようなところも幾つかあるんだろ?」
「勿論ある。有名なところだと三つほどか……? 割りとつい最近までどこが真の後継者かで争っていたぞ」
「つい最近まで? 今は違うのか?」
そう言えば、そんな話を昔してたな。確か、始めはどんな意図で言っていたのかは知らないが、本気にした住民達がどんどん話を大きくして本人達でも収集が付かない状態に陥ったんだったか?
「ああ。魔王復活の噂話に乗じて自分達こそが正当な後継者だと名乗ったり住民を煽ったり……他の勢力と小競り合いを続けていたな。……が、本当にその気になった住民達が誰が後継者として戦ってくれるのかで本気で話し合うようになってな。ここまでは各勢力がぶつかり合うだけで済んだから予定調和と言うか、お互い覚悟しているところだったが……火霊祭を何度も制している者達の名前まで上がって来るようになってしまったわけだ」
「どこが正当な後継者たる派閥かって言い争いから、誰が正統後継者に相応しい魔術師か? という話に変わり、現代で最強の魔術師は誰だ? って話に変わっていったってわけか。まあ、当然の話の流れではあるな」
結局は、復活した魔王と戦えるだけの優れた魔術師である事が望まれているわけだからな。それは結局のところ、現時点でこの世界で最も強い魔術師は誰かと議論する事と大差無い話になるのは当然の事だろう。
「それで困ってしまったのは各勢力のトップ達だ。何せ壮大な事を言ってしまった上に、他の勢力にも弱気な態度を見せるわけにもいかず、三者三葉に引くに引けない状況が生まれてしまったわけだ」
「下手に引き下がったら、残りの二つから言いたい放題にされるのは目に見えているからな」
「で、最悪な事に、とうとう現役の優勝経験者までもが正統後継者を名乗り始める事態が発生してしまったわけだ」
……まあ、名乗る奴がいてもおかしくはないだろうな。そもそも名乗る資格は十分にあると言えるだろう。
「実際に優勝した経験があるなら、誰も文句は言えないだろうな。住民達は盛り上がっただろ?」
「そうだな。誰が相応しいかで実際に戦って決めるべきだという雰囲気が漂い始めていたが、ここで示し合わせたかのように人間同士で戦うべきではないと綺麗事を口にし始めた。……まあ、結論を言えば、今年の火霊祭で優勝してしまうのが一番手っ取り早い証明方法だという事で落ち着いてしまったわけだ」
滅茶苦茶責任重大になってしまったわけか。……と、言うか、そう考えると正統後継者を名乗ってしまった優勝経験者にとってもかなりのプレッシャーだよな? これで優勝を逃したら自称後継者の信ぴょう性が大きく揺らぐ事になってしまうんだから。




