殆どはお山の大将
「賢者様の後継者を自称する流派が百に及ぶって……どこかで淘汰されたりはしないのか?」
「そのような動きは何度かあったとされているな。定期的に伝説の勇者様御一行の後継者を名乗る者達を潰して回る者が現れたりするらしい」
「なんでそんな奴が……?」
「さあな。伝説の勇者様御一行の後継者を倒してみせる事で、自身の実力を試してみたり、或いは誇示して見せようという思惑があるのかもしれんし……もっと他に別の理由があるのかもしれん」
後継者狩りなんて真似をしている奴までいるのか……腕試しかあるいは実力の誇示か……場合によっては、熱狂的な信者って可能性もあるよな……? 後継者の質の低下を嘆いてそいつらを倒すって奴がいてもおかしくない。
「後継者を名乗るに相応しい実力があるかどうか見定める目的で戦う奴もいるかもしれんな。しかし、それでも百に近い数字の流派が存在するってのは凄い話だな」
「まあ、流派を潰すと言っても、数十年に一度、幾つかの流派が潰される程度の頻度だからな……流石にその程度のペースではどうにもならんだろう」
「流派の数が一気に半分に減るとかそういう事件は起こっていないのか?」
「そんな事があったら、その様々な流派を潰して回っている者の名前が有名になるだろうし、その自称弟子や後継者が現れる事になると思うぞ」
勝手に後継者を名乗る者が出て来る事が絶えないというのに、そいつらを倒して回っている奴が出てきたら、今度は結局はそいつらを倒して回っている奴の自称後継者が出て来るってわけか……皮肉な話だな。
「結局は強い奴の弟子を勝手に名乗る者が出て来るのは止めようが無いってわけか。まあ、箔を付けるのには打って付けだろうな」
「実力や実績が同じなら、箔の付いている方が注目されるからな。それで実力が伴っていなければかえって悪目立ちするし、そうなると、標的にされる事も多い」
「それでも世界に百近い数が存在しているってのは信じられない多さだな」
「その殆どが田舎に拠点を構えているような……言い方は悪いがお山の大将ばかりだから世間から認知されてないだけという話もあるぞ。それにもしかしたら、大会とは何の関係も無い似非流派があっても何ら不思議ではない」
お山の大将なせいで地元の人間からしか認知されておらず、結果として腕試しに挑戦される憂き目にも遭わないってわけか。ある意味賢いと言えば賢い選択ではあるな。




