自称後継者の数
「まあ、理屈の話で言えば火霊祭に一度でも優勝していいれば後継者を名乗れる資格はあるって事になるわけだからな。当然、自分の実力に絶対の自信があれば優勝経験が一回でも引き下がりはしないだろうな」
順当に考えれば一番多い回数が多い者が後継者として相応しいと言う話になるのだろうが、他の優勝経験者だって世界で最も優れた魔術師の称号を持っているという自負の念はあるだろう。大人しく引き下がる奴は少ないと思うがな。
「その傾向はあるな。一応、魔王復活の噂話が流れる前までは火霊祭優勝者が広めた魔術師集団の現当主……つまり、優勝者の弟子という立場の者がそれを名乗っていたりもしたが、今では名乗る事をやめたり、そもそも世間が認めなくなってきている」
大会優勝者は賢者様の後継者だからその人の弟子は……賢者様の弟子の弟子って事か。
「まあ、本当に賢者様が弟子と認定した奴の系列なら百歩譲って認められるかもしれないが……普通は優勝者を優先するだろうし、そもそも火霊祭で優勝して見せろって話でもあるな」
「自称弟子が多過ぎて誰も信用出来ん状態になっているな。もっとも、過去の優勝経験者達までもが本格的に名乗りを上げたあたりから一気に下火になっていったし、そもそも名乗る者もいなくなったが」
そりゃあ、本当に自分の命が危険となっても意地を張り続けられる奴はかなり稀だろうからな。勿論、その状態でも後に引けないって奴は当然のようにいるだろうが……世間から相手にされなくなっていくと考えれば、かえって何でもかんでも好き勝手言えるとも考えられるわけだ。
「まあ、再結成された勇者様一行のメンバーに選ばれるかと言ったら、まず選ばれないだろう人物だろうな。そういう意味では運は良いんじゃないか?」
「しかし、今まで賢者様の後継者として人々に魔法を教えてきていたわけだからな……面目は丸つぶれだろうな。実際に、受講者の数も激減して組織が立ち行かなくなってきているところも山ほど出てきているみたいだしな」
「そんなにたくさんあるのか……」
「まあ、数百年の歴史ある大会だからな。いかに複数回優勝している猛者がいるとは言っても、それでも数年もあれば一人は新しい優勝経験者が現れるだろうし、その人物が新しく流派でも作って弟子を募れば人は集まるだろうから……現代では百にも及ぶ自称後継者を名乗る流派は存在している事になる計算だ」
そりゃあ、言われてみたらそれくらいあってもおかしくは無いのだろうが……もっと早い段階で淘汰されてたりするものじゃないのか? それとも、世界が広すぎて淘汰されずに残り続けてしまったのか。




