魔力のある土地
「なるほどな……何も存在しない場所から急に魔力が発生したりはしないと言うわけか」
「まあ、当然の話だな。一見すると何もない様に見える土地でも、地下深くには魔力の源となるような何かが埋まっているというのが殆どだ。何も無いのに魔力があるというのは、特殊な場合でもない限りはあり得ない」
まあ、無から有を容易く生み出す事が出来たら苦労はしないか。
「特殊な場合って……全く前例が無いってわけでもないのか?」
「まあな。特に魔界に多く見られる事があるんだが……勿論、こっちの方にもある。魔力の源となる物が確認されないにも関わらず、魔力が溢れ返っているような土地がだ。その土地を良く調べてみると、一つの例外も無く、何らかの戦闘の痕跡が残されているのが確認されているがな」
戦闘の痕跡か。
「つまり……何者かが戦った結果、その土地に魔力が宿るようになったというわけか」
「そういう事になるな。これは我々人間の住む範囲でなら伝承や記録等を調査する事でわかるのだが……魔界の場合はそうもいかんがな」
それはそうだろうな。魔界の特定の場所でかつて戦いが行われたかどうかなんて人間側には調べようが無いからな。
「調べようが無いのにどうやってわかったんだ?」
「一つは勇者様御一行のメンバーが残した手記を手掛かりに判明した。丁度、大規模な戦闘が行われた場所に関する記述があって、当時は魔力が感じ取れなかった事が書かれていたから、勇者様御一行と魔王軍との戦いで、大量の魔力が残存するようになってしまったのだろうと結論付けられた」
「なるほどね」
魔法の撃ち合いが原因か、それとも高い魔力を持った魔物の死体がその土地に散乱したのが原因か、あるいはその両方かはともかく、魔力がその土地に残ると言う現象は起こりえるというわけか。
「他は、魔力が溢れ返っている場所の地下には必ず何かが眠っているという常識を信じてその土地を発掘して判明したというものがある。どんなに地下深くを掘り進めても、魔力の源となりえるような資源が一向に見つからんという事が何か所かであってな。詳しく調べてみると、深い地層で何らかの大規模な戦闘が行われたであろう痕跡が見つかったわけだ」
そんなの良く突き止めたな……いや、まあ、魔界の調査がそもそもの目的なんだからそりゃあ突き止める事も出来るだろってのはその通りなんだが……今の口調から考えると、資源の発掘を目的に掘ってたんだよな? そこから調査に漕ぎ着けるのは何気に結構凄い事だぞ。




