思いついた人
「お前の話を聞いてると、瘴気を魔力に戻すよりもっと別の物に変えた方が効率が良さそうだな?」
「まあ、言ってみればマイナスの状態を極めて高いプラスで混ぜ合わせてプラスにするような力業だからな。そんな力を扱えるのはほんの一握りしかいない。当然、浄化出来る量にも限界がある」
とてもじゃないが人類の住む土地全てを浄化するなんて夢のまた夢だな。
「浄化出来る量には限度がある。そしてその浄化が出来る人間もほんの僅か。世界どころか、国一つだってとてもじゃないがカバーしきれないってわけか」
「ああ。基本は教会で治療にあたるというのが当時の状況だ。魔王が封印されるまではな」
「……? 魔王が倒されたところで瘴気の汚染は消えないだろ? 人海戦術も出来るような性質の対処法でもないし」
「魔王が倒される前後で瘴気の新しい対処法が発見されたんだよ。もっと別の物質に変えるという手法だ。これで幾らか難易度が下がった」
「対処出来る人間が相対的に増えたってわけか。しかし、幾らか程度じゃ焼け石に水だろ? これ以上増える心配がなくなったって言っても追いつかないだろ?」
人間の住む土地の殆どが被害を受けたって話だからな。
「魔王が倒される前まではな。……正確には、魔界門が破壊されてから魔王が倒されるまでの間の期間の話だが……」
「それってどれだけの期間だ? と、いうか、その方法を発見したのって……」
「伝説の勇者様御一行の内の一人、賢者様が発見した。魔界門破壊後の簡易版も、魔界で発見したさらなる改良版もな」
とんでもない偉業を成し遂げてんな……そりゃ、今度の大会も盛り上がるわな。そんな直接人々を救いまくってる偉人が関係する大会なら。
「天才……なんてレベルじゃねえなその人。いったいどんな頭をしてるんだ?」
「そんなもん私に測れるわけがないだろう。圧倒的な力で誰かを助けたとかならともかく、より多くの人間に人を助ける手段を与えたなんてどう測れと言うんだ?」
「まあ、比較のしようがないな。ある意味では、魔王を倒した後の方が大変だったんじゃないか、その賢者様は?」
「だろうな。魔王を倒すまでの道中なら、功績は甲乙付け難いが、魔王を倒した後の功績なら、ぶっちぎりでトップだと評しても過言じゃないだろうな」
まあ、魔王を倒した後も人類に貢献しまくってたらそういう評価にもなるだろうな。




