船での行き来は不可能
「なるほどな……いったいどれだけの時間がかかるかも、金がかかるかもわからないわけだ。そんな事、どこの国だって出来るわけがない。どんな超越国家だって話だな」
魔界が物理的にどれくらいの大きさの面積なのかは見当も付かないが、まさか国一つより小さいって事も無いだろう。そんな規模で殲滅なんて、魔物どころか虫や植物の類ですら失敗に終わるのが目に見えているな。
「想像もつかない話だが、仮に、もし仮にだが、これだけの戦力があれば可能だという試算が出たとして、その戦力をどうやって運ぶかという問題も解決せねばならんな」
「まず最初に戦力の輸送……その後は継続的に物資の輸送か。どっちにしても船を使いたいところだな」
物を運ぶとなったら一番効率が良いのは船だ。船なら浮力でより重い荷物を一度に運べるからな。
これを陸路で運ぼうものなら間違いなく車輪がぶっ壊れる事だろう。
「しかし、海路には魔物が多数生息している。ある程度の生態こそ判明しているものの……霧を発生させられたら厄介な上に、深海へ向けての迎撃装置を備え付ける必要もある。保険は……いくら吹っ掛けられるかわかったものでは無いな」
「保険なんてあるのか?」
「半分冗談だ。幾ら何でも海路で魔界への物資輸送に対応してくれる保険は存在しないハズだ」
海路でさえ無ければ保険が適用されるみたいな言い方だな……いや、飛空艇での移動には成功しているわけだから、対応してくれる保険会社が存在してもおかしくは無いのか?
「より大量の物資を搭載するとなると、何かあった時の被害金額も桁が変わって来るからな……成功モデルが無い事には保険なんて成り立たないだろうな」
保険会社だって利益を出すために仕事をしてるんだから、赤字になるとわかりきってる案件に関わりたがるわけがないからな。何かしらの上手く行くという根拠さえあれば交渉の余地はあるだろうが……難しいだろうな。
「魔界に海路で物資を送り届けた事があるという実績か。そんなものは聞いた事が無いな」
「伝説の勇者様一行は辿り着いたハズだが……それは実績にはならないのか?」
「それは無理だな。伝説の勇者様御一行が上手く行ったから実績となる……と言うよりは、むしろその逆で、伝説的な存在ですら、一筋縄では行き来する事が出来なかったという証左になるからな……かえって成功率の低さを証明してしまうだろうな」
ふむ、伝説の勇者様一行が四苦八苦したんだから、ましてや一般人が成功するわけがないというわけか。確かにそれを言われたらぐうの音も出ないな。




