新しい魔王の条件
「確かに新しく魔王になるというのも大変だが、そもそも魔王を名乗る事が出来るのかどうかもわからんな」
「ん? 相応しい奴が出てくれば納得するんじゃないのか?」
「問題なのはその納得だ。勇者様御一行に敗北して封印されてしまった魔王……その後継者が勇者様御一行に対して何のアクションも取らないなんて事が認められると思うか? それに、魔王が封印されているという状態なのも理由になりえる」
「……新しく魔王を名乗るからには勇者様一行にリベンジしてみせろって事か……いや、むしろ勇者様一行を倒してようやく魔王を名乗る事が許されるとかそういう話になりかねないな」
確かに何の報復も無しに次の魔王を名乗るのは無理があるような気がするな……しかし、それはあくまでも人間の感覚の話であって、魔物からしてみたらそんな感情は持ち合わせていないって可能性もあるが。
「そうだな。勇者様御一行に負けたままでは、魔王と言う肩書にケチが付く事になる」
「だが、当たり前の話だが、伝説の勇者様一行のメンバーは誰も生き残っていないよな?」
「ああ。だが、魔王が敗北した直後はそうではないだろう? 後継争いになれば妥当勇者を掲げない事には話にならん」
「確かにな。しかしそうなると、負けて疲弊している中で勇者との戦いを視野に入れなければならないわけだ。最初はそれで良いのかもしれないが、百年も経てばそうも言っていられなくなる。もう生きていない連中へのリベンジなんてやりようがないんだからな」
伝説の勇者様一行のメンバー存命中ならその理屈も通るだろうが、すでに亡くなっていた場合、リベンジする相手がいないという状態に陥るからな。
「そういう事を考えていくと、次の魔王はかつての魔王が成し遂げられなかった事をしたがるようになるわけだ。勇者様御一行がもう生きていないなら、かつての魔王が成し遂げられなかった事をやるしか選択肢が残されていないわけだ」
「……侵略か。魔物達は敗北して疲弊しているのに、かつての魔王が挫折した事を成し遂げるために戦わなければならないとなると、魔物達の勢力は衰退していくしかないな」
そう考えると、魔物達が勇者様一行の存在を忘れるくらいには時間が必要になってくるな。全盛期の魔王軍が出来なかった事を、それより弱くなった魔王軍で成し遂げようというのは酷な話だしな。




