恐らく覇道
「魔王の住んでいる城か……魔界で活動している魔物達にとってもほぼ知られていない情報とかでもない限りはどこからでも情報は仕入れられるだろうな」
仮に百の魔物が魔王の所在を知っていたとして、そいつらから真偽のほどを考慮しなければそれを聞き出す事はそこまで難しくは無いだろう。問題なのはその聞き出した情報の信ぴょう性なのだが……これもたくさんの魔物から聞き出せばある程度は信用出来るだろう。多くの魔物が示し合わせたように虚偽の情報を答える可能性も勿論あるにはあるのだが……それをやるには事前の打ち合わせが必須になるからな。そこまで用意周到だったらお手上げだろう。
「まあ、魔物からしてみたら自分達の王がどこに住んでるのか聞かれている状態だからな。知らないって事はないだろう」
「基本的に一枚岩ではない魔物達を従えているという事は実力と言うか、戦闘能力で圧倒しているハズだからな。城だって誇示しているだろうな」
魔王が純粋な強さではなく、血統だとかそういったものでなっているのだとしたら、勇者様一行の成し遂げた功績がとたんにおかしくなるからな。
「だな。伝承にある魔王城も怪しいだとか不気味だとかの表現はあっても地味だとかそういう話は聞かないからな。ちゃんと立派な造りをした建築物だったのは予想できる」
「魔物だから住んでる家の守りを厳重にしないだとか、そういう価値観が無いなら、多くの魔物が知ってるだろうな。魔王がどこに住んでるかなんて」
人間と魔物とでは価値観が違うなんてざらにあるだろうからな。自分の身は自分で守れるとか、住んでいる場所がステータスにならないとか、そういう価値観でもない限りはそりゃあ城だって建てるだろうし、それを誇示するだろう。
「変な話だが、魔王よりも前の魔王だとか、魔王の親がどういう魔物なのかなんて話は聞いた事が無いからな。いわゆる、覇道で魔界を支配していたのだろう。そうなれば、自分の力を誇示する事は必須と言えるな」
力で王の座を手中に収めたならば、当然その権利は全ての魔物が持っているハズだからな。魔王以上の武力があるならば魔王に反逆してその地位を略奪して良いという理屈になる。覇道を避けるべき理由がまさにこれなのだが……覇道で王になったのであれば、周囲の者達に『こいつには逆らえない』とか『こいつには勝てない』と思わせ続ける必要があるわけだ。となれば、自身の力を誇示し続ける必要が生まれる。




