噛み合わない索敵
「まあ、実質的に広範囲を索敵出来るというだけであって、厳密には索敵している範囲は極めて狭い事になるからそこまで万能でもないがな」
「万能じゃないって言うが、索敵魔法の範囲から常に外れるように動き続けでもしない限りはどこかで引っかかるんだろう? そこまで気になる欠点は無いように思うが……」
イメージとしては回転し続けるアンテナの向きにいないように常にアンテナの後ろを歩き続けるようなものだからな。
「一見すると合理的に思えるかもしれないが、どこか遠くに潜んでいる敵を見つけ出すだけならもっと効率の良い方法がある。属性魔法の要素を組み込まずに……例えば空間魔法だけで敵の位置を把握する場合はもっと他の理由が必要になる」
「お前がまさにそのタイプだな。どういう理由があるんだ?」
オリヴィエは空間魔法で周囲の敵の位置を把握しているらしいからな。属性魔法を組み込めばより遠くの敵の位置を感知出来るならやらない手は無いと思うが……?
「私の場合は転送魔法で攻撃を当てるからな。索敵魔法に変に属性の要素を組み込んで複雑化させるとその分攻撃が遅くなる弊害が発生するんだ。それに範囲を広げたところでそこまで転送魔法が届かなくては大して意味が無いしな」
「射程圏外からでも敵の位置は特定出来た方が何かと有利になると思うんだが……」
「そういう場合もあるな。私も一応だが、火属性魔法を組み込むことでより広範囲を索敵する事が出来る。……が、その場合は範囲こそ広いものの、熱量しか測れん精度にまで落ちる」
「精度が落ちるのか……? いや、それもそうか。そもそも情報量が多すぎて扱い切れないって話だったからな。限界以上により広範囲を索敵するって事は、獲得する情報の取捨選択が発生するわけか」
周囲の空間の形状を感知するよりも、熱源だけ感知出来るように調整した方が情報量は少なく済むわけだからな。
「その通りだ。……で、この性質を相手に読まれると非常に攻略されやすくなってしまうわけだ」
「情報が制限されるわけだから、その要素さえ誤魔化してさえしまえば索敵魔法を掻い潜れるって事か……?」
「私の場合は熱量を測るタイプの索敵魔法も習得しているのだが……体温を変えられたら一気に周囲の物体との識別が困難になってしまうという弱点がある。そしてさらに付け加えるなら……私の魔法は対象の温度を跳ね上げてしまうという属性的性質があるわけだ」
……まあ、炎だの爆発だのをぶつけるわけだから対象の温度は上昇してしまうだろうな。なるほど、獲得する情報の内容と攻撃方法とが噛み合っていないというわけだ。確かにそれじゃあ使いたがらないだろうな。




