なぜ海の中だと判断出来たか
「信じられない無茶をするんだな……勇者様一行ってのは」
「一応……完全な自暴自棄では無く、かなり高い精度の計算はあったのではないかとは考えられているがな」
「理論的に魔物の存在を考察してそれがどこに潜んでいるかも計算したって事か? 潜水している魔物の位置なんて理詰めで予想出来るものなのか?」
まあ、誇張表現抜きに世界でトップクラスの魔法を使っても霧を晴らす事が出来ないって時点で何か怪しいって考えに至る事は可能かもしれないが……その元凶がどこにいるかを考えるのは流石に無理があるんじゃないのか?
「それは賢者様の知恵がどれ程のものだったかを推し量るしかないな。つまり魔物が発生させる霧の原理を当時から理解していたか、もしくはその状況で解き明かしたかだ」
「どちらにせよ現実的な仮説じゃないな。船乗りが知らない事を何で知ってるんだ? って話だ」
前者だったらもっと早く行動しろよって話だし、後者だと周囲の状況がほぼ何も見えない状況で打開策を考案した事になる。どっちにしても普通じゃないな。
「まあ、そこは賢者様だからと言ったところだろうな。かなり発想の飛躍は必要だが、解けない事もないといったところだ。賢者様はどうやって解き明かしたと思う?」
「……魔法で霧が晴れないのはおかしいって気が付いた時点で自然現象じゃないって考えたのだろうってのは理解出来る。……で、魔物の仕業だと考えた場合、一番先に思いつくのは空中に霧を発生させる魔物が飛んでいるだろうって推測だな。結果から言えば間違ってるようだが……」
正直、普通に考えれば空を飛んでいるという発想になるだろう。海の中で生活してどうやって海上の天候を霧にするなんて生態の魔物が出てくるんだかわけがわからない。
「ああ。空に魔物が潜んでいるという仮説は真っ先に出るな。これの否定材料は魔物側は船の位置を常に特定し続ける必要があるからだと言われている」
「濃い霧の中じゃ魔物の眼も役に立たないってわけか?」
「まあ、何らかの索敵魔法でも持ってたんじゃないか? それで捕捉出来なかったから海の中に潜んでいるんだろうという考察がなされたのではないかと考えられている」
まあ、これから魔王を倒しに敵の本拠地まで殴り込みに行きますって状況なんだから索敵は疎かにはしないだろうな。流石に海の中まで索敵範囲を広げる必要があるって発想にはならなかった事になるが。




