話の信ぴょう性
「魔界まで船で行ったのは良いが……帰りはどうしたんだ?」
「……そりゃあ船だろう?」
「そうなると、船は魔界の海岸に停泊していたか、一度帰ってからまた迎えに行ったかのどちらかになるよな?」
俺は疑問に思った事を口にした。勇者様一行は魔王を倒しに上陸して行ったのだからその間は船を守る戦力が減るハズだ。
「……ふむ、面白い質問だな。考えた事も無かったが……一度撤退してから再び魔界に向かうという選択肢は取れないだろうな。単純に往復が危険過ぎるというのもあるが、いつ戻ってくるかわからない勇者様一行を置いて撤退するというのも不自然だと思うからな。まあ、いつまでに戻って来れなかったから撤退しろくらいの事は言っていたのかもしれないが……」
いつまでに戻って来れなかったら死んだものと判断して撤退するというやつだな。船に積んでいる食料にだって限度があるんだからいつまでも長居は出来ないのは最初からわかってるハズだし、そういう取り決めを最初にやっていてもおかしくは無いな。
「船にどれだけの食料を載せていたかにもよるか。魔界での勇者様一行の生活が一週間程度とする説が出てるって事は、船の出航記録だとか載せていた食料から逆算してその位って算出されているんだろう?」
「まあ、そこら辺が根拠になっているのは事実だな。ただし、あくまでも一説に過ぎないものだとされている。何せ当時の記録が殆ど残っていないからな……」
「伝説と呼ばれる程の功績を残したのにか? むしろいつまでも語り継いでいたりするものだと思うが……」
「むしろ逆だ。伝説や噂話に尾ひれが付きすぎて信ぴょう性が薄くなっているのが現実だな」
船の大きさや載せた荷物を大袈裟に記述している物が混ざっているというわけか。そうなるともはや記録はあてにならないな。
「ある事ない事話を盛ってる可能性があるわけか」
「そういうわけだな。何せ船乗り達の航海日誌でさえ記述がまちまちだったからな」
「まあ、航海日誌は書いた奴の主観が混ざるからな……百人中百人が同じ事を書いている方が怪しいって話になる」
「その手の考察は様々な文献を読み漁って総合的に考えるのが普通だと聞くからな。……一応、出航何日目にどういう魔物からの襲撃を受けたとかの記述で概ね一致している部分もあるから、そういった部分は実際にあったのだろうと考えられているが……その魔物がどれくらいの大きさだったとかはかなりのブレがあるといった感じだ」
「……そういえば、船乗り達の航海日誌と言うが、勇者様一行の中に日記をつけている人はいなかったのか? その人の日記を参照すればある程度はわかるんじゃないのか?」
伝説の勇者様一行は確か四人で魔王を倒したって話だから正直、日記をつけている奴が一人もいないって事も普通にありえるから何とも言えんが。




