魔物の少ない地点
「魔力を補給するだけで生きていける生物か……まあ、いてもおかしくは無いな。生物ってのはこの地上に潤沢に存在する物質を必要な栄養素として消費出来るように進化するものだからな」
この地上にありふれた物質で繁殖できた方が効率が良いだろうからな。
「ああ。それが一番確実だろうな」
「つまり魔界でも比較的人の住みやすい環境ってのが存在するってのがわかるわけだ。なんでそういった場所に拠点を作らせなかったんだ?」
「さっきも言ったと思うが、人間が生存出来る環境と言うのは魔物にとっても居心地の良い環境だ。要するに最初から条件の良さそうな地点には大量の魔物の存在が確認されたわけだ。わざわざそんな場所に拠点を作るというのは自殺行為だろう?」
なるほど、これから建築を行いますというタイミングで外敵から襲われたら堪ったものではないからな。
「じゃあ、開拓した場所ってのは魔物も滅多に立ち寄らないような過酷な環境を選んだって事か……」
「ああ。最終的に人間に生活させるという目標から考えると、拠点の防衛は必須だからな。四六時中魔物に襲われる可能性の高い場所に拠点を作るというのは現実的じゃないという判断だろう。周辺の魔物を全て殲滅するという方法もあるにはあるが……その戦闘の結果、環境が台無しになりましたではあまりにも無意味だからな」
「最初の段階ではゴーレムだけでの活動だからな……最悪拠点を移動させれば良いと考えれば、確かにギリギリの環境を選ぶ理由にはなるな」
魔物にとっても生存が難しい場所に拠点を作られた上に、その拠点の中には食料も無いとなればわざわざ襲おうなんて考える魔物も少ないだろう。
「戦闘それそのものに何らかの生産性は無いからな。得られる物が無い戦い程避けたいものもないだろう。本来ならば倒した魔物の素材を戦利品として回収するなりしたいところだが……それが開拓に役立たないのであれば、戦えば戦うほどジリ貧になっていく。こちらの資材は限られているわけだしな」
避ける事の出来る戦いなら徹底的に避けていきたいというわけか。……まあ、限られたリソースを余計な事に使いたくないなんてのはごく普通の発想だからな。もしも魔物と戦うという選択肢を取るからにはその魔物の素材が必要だとか、調査が進められないだとかの必要に差し迫られてからの話だろう。




