ゴーレムの命名方法
「まず最初に一体だけ投下して、安全を確保したら他のゴーレムや資材を投下していったのか……それはそれで各個撃破されるとかのリスクが高そうだが……」
一体だけの投下なら確かに失敗した際の被害も少なく済むが、その分成功率も低くなるハズ……数体セットで投下した方が良いような気もするが……?
「そこは入念な予行演習や計算の結果だな。計算の上ではゴーレム一体に様子見をさせた方が最も合理的だと判断されたわけだ」
「まあ、専門家がそう判断したのならそうなのだろうが……単独でやらせた方が合理的ってのはあまり想像が出来ないな」
「性能の問題らしいな。より高次元の判断をさせるにはコアの性能を上げるしかないんだが……低スペック版にまともな作業をやらせる環境を高スペック版に作らせてから他のゴーレムを投下させた方が良いらしいぞ」
「そういやそんな話だったな……ん? それって確か風属性の魔力で動くゴーレムだよな? アレに魔界の調査をやらせたのか? ……しかしお前らが売り出しているゴーレムってアレの事だよな……?」
こいつらが販売しているゴーレムなんだからアイスヴァイン領で会ったあのゴーレムの事を言ってるハズだ。……確かあそこの領主殿が所有していたのは軍だか何だかの払い下げ品だったか……? アレに魔界の調査をやらせたのか……流石にもっと扱いやすい個体だとは思うが。
「どれの事を言っているんだ? ……アイスヴァイン殿のところにいる個体の事か……あれは確か六号機と七号機のハズだから……あれよりもっと後に作られた型式だ。確か十五号機のハズだぞ」
「良くそんな数字まで把握しているな」
「まあ、魔界調査を実際に行った個体ならわかる。と言うのも、今現在量産されて売られているのがその個体の次に設計された十六号機の『パトリシア』だからな。その一つ前だから十五号機だ」
「……やっぱりあれってアルファベット順に並んでいるのか……」
何となくそういう法則で命名されているんじゃないかと思ってたが、やはり予想通りだったか。
「ああ。ゴーレム単体としては一号機の時点ですでに完成の域に達していたが……製品として売り出すにはコストパフォーマンスに問題があるとかで色々と改良を重ねていたらしいからな。アイスヴァイン殿が所有しているのは初期の頃に生産された個体だな。あれは確か低スペック版ゴーレムとの同時使用が考案されたモデルのハズだ」
「コストパフォーマンスを追い求めた結果が廉価版のゴーレムか」
「正確には一体の高スペックゴーレムに複数体の低スペックゴーレムの指示をさせるって運用方法だな。色々研究した結果、三十体をワンセットとするのが良いようだ。魔界の開拓事業もその数で行われるのが主流のようだからな」
最初は一体だけで調査をさせて、その後で投下していったのか。……で、三十体のグループで作業させたのが一番効率が良かったわけだ。




