最初にゴーレム投下
「ああ、海が我々の考えている以上に危険な領域だという説は実際に考えられている。まあ、海全体がという意味ではなく、海の中にそういう領域があるという意味だがな」
「魔の海域ってやつか……いや、この場合は魔もいないのか……? 何にせよ、魔界の近くにそういうわけわからんレベルの海域が存在しなければ魔界に生息する魔物は海を泳いでやってくるハズだって考えられているんだな?」
にわかには信じ難い話だが……専門家が不思議に思うくらいなら何かしらの理由があるのだろう。
「万に一つ、そんな立ち入り禁止レベルの海域が存在するのなら、そこに最初に立ち入ってしまった調査船は壊滅的な被害を受けるだろうな」
「最初の一例目を参考に対策が練られると考えると、海路の開拓はかなりのリスクだな」
「まあ、だからこそリターンも大きいのだが……現状のところではもっと初歩的な基礎部分で各国が競い合っている。十分な資源が眠っていたとしても、それを安価に運べないのではまだまだ話にならんな」
資源の産出には至っていないというわけか。
「当面の目的は魔界の調査と開拓ってところか」
「ああ。一応……人間が住めるようになった区画もあるがほんの数年前の話だからな……まだまだ先は長い」
「ん? すでに住んでる奴がいるのか? そもそも、ゴーレムがどうこうってのはいったいいつの話なんだ?」
「計画がいつ考えられたのかは知らないが、魔界にゴーレムが降り立ったのは五年程前だ。その後、ゴーレムを通して空気だとか土壌を調べて……比較的安全な場所にシェルターを作ったらしい」
ゴーレムを投入してから人類が降り立つまでが随分と速いな……? それだけ人間が生存するための好条件な場所があったというわけか。
「ギリギリ人が住めそうな場所があったって事か……良く発見出来たなそんな場所」
「まあ、事前の調査だとか専門家の分析だとかでそういう場所があるだろうとは言われていたからな。その場所の一つにゴーレムを投下したわけだ」
そりゃ流石に調べてから飛空艇を作るか。
「専門家の予想は的中したわけだな?」
「ああ。ゴーレムにシェルターを作らせて、人間が生存可能な環境を作り上げるのに数年かかったようだな。最初はゴーレムのみで活動させていたから雨風を凌げる程度の簡単な壁から、徐々に機材を投下していって……ある程度拠点を強固にしてから環境づくりに着手したようだ。相当手こずったらしいぞ? 空気の密閉だとか、水源確保に」
まあ、人が生活するには確実に必要になる部分だな。……それに対し、ゴーレムを使っている分には考慮する必要の無い要素でもあるわけか。呼吸もしないし、飲み水が無くても動き続ける事が出来るのだからな。




