意思決定をしていた人
「計画に注ぎ込まれた費用と回収した利益についてはわからんな。……だが、実際に記事には出ていないが、かなり希少な鉱石が発見されているのは事実だから……安定して発掘する事が出来れば費用は回収出来るのだろうな」
「……記事には出てないって……そんなの他人に教えて良いのか?」
「ん? ああ、公式に発表されていないのは量の方だ。発見された資源そのものは公表している」
魔界を開拓した計画の詳細はオリヴィエも把握していない様子だ。流石に身内でも教えられないという事か。
「お前も記事に出ている内容くらいしかわからないって事か」
「ああ。お姉様に聞いても守秘義務があるからと教えてもらえなかったからな。……もしかしたら若干は記事に出ていない情報というのもあるのかもしれないが、大きくは違わないだろう。だいたいそういう認識で構わない」
「ん? お前の姉が守秘義務って言ったのか? 自分も良くわからないとかじゃなくてか?」
「……一応、私と違って例の計画に深く関わっているからな」
深く関わってるって……計画の内容を知ってるとかそういうレベルの言い方じゃないよな……? 具体的な調査報告を受けているとかそういうレベルで関わってるのか?
「現地がどういう状況か詳細に把握しているのか」
「そういう事だな。魔界の開拓計画にはお婆様の主導で進められて……まあ、と言うか、お婆様の許可無しに話は進められないんだから当たり前なんだが……その時にお姉様も関わっていたわけだ。何せ、計画の進捗だとか、調査結果を一から十までお婆様に報告していたら手間がかかり過ぎるからな」
「あの人が間に入って実質的に計画を進めていたわけか」
まあ、どんなデカいビッグプロジェクトだろうと社長が付きっ切りで事に当たってるかと言われたらそんな事はないからな。かと言って全部他人に丸投げってのも不安だし、誰か信用出来る人間に一任させようってわけか。それがシルヴィアさんだったってわけだ。まあ、取締役みたいなものか。
「いちいち当主様に意思決定を仰いでいたら迅速な対応が出来なくなるからな……その役割をあの人がやっていたのか」
「そうだな。魔界なんていう得体の知れない環境では何が起こるかわかったものでは無いからな……そもそもの話、お婆様だって専門的な知識を持っているわけでは無いのだから担当からの要求に対して許可を出すか出さないかの二つに一つだ。よほど重大な決断でもない限りは逐一お婆様に伝える必要は無い」
「まあ、そういう意味じゃ当主様の孫娘ってのは話を通す相手としては妥当なところかもな」
究極的には現場をまともに管理出来れば良いだけの話だからな。当主本人が頻繁に出向く必要はそこまで無いと言えるわけだ。……まあ、オリヴィエみたいにその現場を管理するだけの専門知識や能力があるかどうかわからん奴に任せるのは問題だが……そういうのを考慮した結果がシルヴィアさんなのだろう。




