乗り込むのは早い方が良い
「ここで手続きをすれば良いのか……」
オリヴィエの案内に着いて行くと、広いロビーへと辿り着いた。たくさんのカウンターが並んであり、その中の幾つかに係員が受付をしていた。今は日も沈んでいて行き来する飛空艇の数自体が少ないのだろう。日中で客の数が多い時間帯はすべてのカウンターで受付を行っているのだろう。
「私達が並ぶのは……あのカウンターだ」
オリヴィエは一番奥のカウンターを指さす。
「あれか。すぐに手続きを済ませよう」
「まずは最初に私がやろう。良く見ておけ」
受付に最初に並んだのはオリヴィエだった。係員に俺やミーシャの事を指さしながら何かを話すと、係員はファイルを確認し、その中にある書類を取り出した。その後、オリヴィエはパスポートを取り出して係員に見せ、手荷物の中身を係員に見せた。
「終わったみたいだな」
「次はどちらかだな。係員の指示に従ってれば問題は無い」
「じゃあ、次は俺が行くか」
俺も先ほどのオリヴィエと同様にパスポートを見せて本人確認をし、その後手荷物の中身を見せてその他の手続を行った。俺のチェックインが完了すると、今度はミーシャもそれに続く。
「とりあえずはこれで問題は無い。まあ、まだ終わりじゃないがな。この後はボディチェックを行って、税関検査で持ち込んだ物の中に関税のかかる物があった場合はそれに応じた手続きを提出する。最後に出国審査でスタンプを押されて終わりだ。……まあ、関税に引っかかる物など持って来てはいないだろうからすぐに終わるだろう」
関税に引っかかる物というと……酒やタバコの類か。あとは国によっては一部の飲食物も持ち込み禁止だったりするが……まあ、そんな変なものは誰も持っていないだろう。
「これが終わったら搭乗口まで移動して、出発時刻まで待つのか?」
「まあな。だが、今回我々が乗り込むのは旅行用のツアー便ではなく、輸送用の、しかも個人所有の飛空艇だからな。ゆっくりしている時間は無いぞ」
普通だったら出発時刻の三十分前までに搭乗口に並んでいるものだが……個人所有の飛空艇ならそういうのを無視して即乗り込むのか。
「乗り込むのが速すぎるって事にはならないのか」
「ああ。搭乗員は全員こちらで用意している人間だからな。特に誰かの迷惑になるって事も無いし……それに、私達の場合はさっさと乗り込んでしまった方が都合が良いだろう」
「それもそうだな」
確かにロビーに長居して不特定多数の人間に見られるのも避けられるしな。早い方が良いな。




