箱に詰め込んだ物
「おい、着いたぞ」
「ちょっと待っててくれ」
馬車の移動が止まったのを感じた。直後、オリヴィエが到着を俺に告げる。しかし、俺はまだメモを書いている途中だった。
「急げよ」
「私は書き終わったよ」
「もう書き終わったのか? もうちょっとで書き終わるから……」
俺は慌てて飛空艇に積み込む手はずになっている武具の類の名前とその説明を書きこむ。妙な固有名詞や専門用語が連発しまくるのは避けた方が良いかとも思ったが、明らかにまともな見た目の武器……誰かから注文されたとして、新たに作れるような見た目の武器でもないし、多少意味不明な単語が混ざっていても特に怪しまれはしないだろう。……と、言うか、まず見た目からして怪しいから説明もクソもない。
「まだか? 結構時間がかかってるな」
「説明しにくいものが多いからな……」
「ざっくりとした説明だけでも構わんぞ?」
「そのつもりで書いているが……色々詰め込んだからな」
「まあ、良いだろう。私は荷物を転送してるから終わったら言ってくれ」
そう言うと、オリヴィエはどこからともなく箱を取り出した。……まあ、どこからともなくとは言っても恐らく転送魔法で取り出したのだろうとは思うが。
「それが武器の入ってる箱なの?」
「いや、これはまだただの空箱だ。だが、これには幾つか細工が施されていてな。空間魔法で予めリンクさせておいた他のアイテムボックスと繋げる事が出来る」
オリヴィエはミーシャからの質問に答えると、箱の装飾品としてつけられている宝石をそっと指でなぞる。その瞬間、宝石が淡く光り始めた。
「それでリンク完了なのか?」
「まあな。まずはメモを書き終えているミーシャからだ。中身を確認してくれ」
オリヴィエは箱を開けると、その中身をミーシャに見せた。
「うん。大丈夫だね」
「忘れている物は無いな? メモの方にも書き忘れている物は無いか?」
「大丈夫だね。元々、魔導書と杖と……後は装飾品しか入ってないし」
ミーシャの荷物は問題無く転送できたようだ。
「そうか。なら、次は貴様の番だ」
そう言いながらオリヴィエはまた新しく別の箱を取り出した。そして、その後は先ほどと同じ手順が繰り返された。
「お、転送が終わったみたいだね」
「ああ。……なるほどな、これはメモで説明するのが難しそうだ」
箱を開けて中身を確認すると、オリヴィエは納得した様子で頷く。それはそうだろうな。俺が箱に詰め込んだ武具の中には、どう見ても動物の体のパーツを組み合わせたような武器が入っていたのだから。




