昔は危険
「今は比較的安全を確保できてるってのは……昔はそういうものが一切無い状態で航海してたって事だよな……?」
「まあな。地平線の向こうがどうなってるのかわかってないような時代から船を使用していたとも言われているし……死と隣り合わせどころかほぼ死にに行くような時代もあったと思うぞ」
地平線の向こう側の情報が一切無い状態での航海とか、船だってまともな物は作れないだろうな。そもそもどういう形状が好ましいかの判断も出来ない時代……ましてや、魔物なんて言う魑魅魍魎の類まで存在するとなると、死にに行くようなものって解釈はあながち間違っていないな。
「地図も無ければ海の天候に関する知識も無い状態での航海か……想像したくないな。……だが、やはり一番怖いのは魔物からの襲撃だな」
「船体に穴を開けられたら一巻の終わりだからな」
船が沈没したら荷物はほぼ全滅だしな……どれくらいの頻度で魔物が襲って来るのかは知らないが、積極的に船を攻撃してくる生き物がいるとか、船乗りからしてみたら気が気じゃない話だな。
「陸路での輸送だって現代でも危険が伴うってのに、良くやるよそんなのを……」
「やらなければ自分達が終わるという状況だったのだろう? それか興味が勝ったかだな」
「いや、そもそも海岸沿いの守りを固めるのは必須だから魔物対策は全力で考案されてたんじゃないか? 塩とか取れなくなるし」
海岸沿いが魔物からの襲撃を受け放題ですじゃ海岸沿いに人が住めなくなるからな。それだと塩の確保とかで死活問題になるだろうし。
「……確かに塩が取れなくなるのは不味いな……」
「海から上がってくる魔物と戦って、どんどん海の上とか海の中とか、戦える範囲を広げていったって可能性はあるな」
人が住んでいる場所からより遠くの場所で戦闘が行えるなら、人里の受ける被害はその分だけ抑えられるからな。特に港なんてそうそう移設出来るような性質の物でもないしな。
「それが今じゃ魔物被害に遭った港町なんて殆ど聞かないからな。船で旅行にまで行けるってんだから良い時代になったもんだよ。今度の大会だって船で行くって奴も大勢いるだろ?」
「それはそうだな。だが、船で行くのは相当時間がかかるぞ? 陸路や空路を使うというのが普通だろうな」
まあ、船の移動スピードなんて大して速くないだろうし、空路なんてものがあるんだったらそっちを使うだろうな。




